NTTドコモのシェアサイクル事業を引き継ぎ、2015年に子会社として創業したドコモ・バイクシェア(東京・港)。11年度に年間4万回だった利用回数は、19年度には年間1200万回まで増加。事業拡大に伴い、20年6月にリリースした新しいアプリも好評だ。社長の堀清敬氏とプロジェクトを総合プロデュースした久下玄氏に、新アプリの狙いを聞いた。

堀 清敬(ほり きよたか)氏 (左)
ドコモ・バイクシェア 社長
1995年にNTTドコモに入社し、ネットワークソフトウェアセンター配属。99年経営企画部に異動。その後、日本電信電話、ドコモヘルスケアなどを経て、2017年7月1日ドコモ・バイクシェア社長に就任

久下 玄(くげ はじめ)氏 (右)
tsug代表、デザイナー、エンジニア
家電メーカーのプロダクトデザイナーを経て、2009年デザインファームtsug創業。12年コイニー(現、ヘイ)創業に参画。事業戦略、技術開発、製品デザインを総合的に手掛け、さまざまなイノベーションプロジェクトに携わる

サービスの現状を教えてください。

 現在のバイクシェアサービスは、2011年4月にNTTドコモが横浜市と始めた共同社会実験がベース。11年度に年間4万回だった利用回数は、19年度には年間1200万回に増えています。成長の要因は、行政との連携が進むなど、サービスエリアが広がっていること。バイクシェアのサービス拠点であるポートの設置密度を濃くし、数百メートル歩けば必ずポートがあるような状況にできれば、より多くの利用につながり、ビジネスも成長すると分かってきました。

サービス提供エリアは?

 東京は、千代田区の「ちよくる」など、12の区に860ほどのポートがあり、合計約8600台の赤い電動アシスト自転車を利用可能です。他にも、札幌や仙台、広島、沖縄など、日本各地で我々のアプリを使ったシェアサイクルサービスが展開されています。

久下 ドコモ・バイクシェアは、バイクシェアサービスのプラットフォームを提供する企業です。

 我々はシステムを整備し、自転車の利用に使うアプリや自転車という機材を各運営主体に提供しています。運営主体は各地で異なりますが、共通ID(ユーザーアカウント)エリア内であれば、例えば札幌で登録したIDで金沢の自転車を使うことができます。

新アプリをリリースした経緯は?

 創業時からずっと、同じシステムやアプリでサービスを提供してきました。しかし、もともとのシステムは、現在のように年1000万回を超える利用を想定しておらず、爆発的に増えた利用回数にシステムの増改築で耐えてきたのが実態でした。シェアサイクルは、通勤通学の利用が多いのですが、当時は朝晩のタイミングでサーバーが不安定になることもあり、ユーザーのみなさんにご迷惑をおかけしていました。なので、アプリ刷新の前に、システムを増強しています。

久下 今回のプロジェクトは、アプリだけを作り替える案件ではなく、システムも含めたサービス全体のリビルド。バイクシェアというビジネスの成長に必要なものの検討も、私の役割でした。

 東京オリンピック、パラリンピックで海外の方々が赤い自転車を使う機会が増えると考え、2年ほど前に、久下さんに「自転車のUI(ユーザーインターフェース)、UX(ユーザーエクスペリエンス)を完全リニューアルしたい」と依頼しました。アプリは単に、きれい、かっこいいではなく、乗ることをいかにスムーズに体験していただけるか。アプリを立ち上げてすぐに乗れるという体験の提供に必要なものを、システム要件からアプリのアイコンなどまで、UI/UXを中心に総合的にプロデュースしてもらいました。

久下 当初から、「どれくらいのタームで、どのくらいの投資をするか」という話を、ハードウエアに使う想定部材の原価なども含めて、ずいぶんしましたね。その上で優先順位を付けて、目指す体験に必要な具体策を練りました。最終的には、システムの増強とアプリの刷新、自転車の制御モジュールというハードウエアの刷新を進めることになりました。