日経クロストレンドでは「P&Gマフィア」と呼ばれるP&G出身の敏腕マーケターの活躍を描いてきた。なぜ同社出身者は他業界でも活躍できるのか。それは他社のマーケターでも可能なのか。米P&Gのヴァイスプレジデントを務め、現在マーケティングアカデミー「Marketing Waza」を主宰する、マフィアの“総帥”、和田浩子氏がマーケティング人材の育て方を語る。
マーケティングには「型」がある
これまで和田さんの後輩に当たる“P&Gマフィア”の方々の活躍ぶりを日経クロストレンドの特集記事などで取り上げてきました。P&G出身マーケターはどうして様々な企業で活躍できるのでしょう?
よくいただくご質問ですね。暗に一般的な日本企業と比較しているとして、その出身者が外に出て活躍していないとすれば、どうしてできないのでしょうか? もちろん日本企業にもマーケティングの成功例はありますよね。
もし質問に対して1つ要因を挙げるとすれば、マーケティングのノウハウが属人的になっているのではないでしょうか。よい取り組みがあっても、それが受け継がれていかないとすれば、あり得ることです。

Office WaDa代表、元米P&Gヴァイス・プレジデント
コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス社外取締役、ユニ・チャーム社外取締役、島津製作所社外取締役
2000年、Global Leadership Councilに最初の日本人として入会。後、ダイソン日本支社代表取締役社長、日本トイザらス代表取締役社長兼最高業務執行責任者(COO)。2004年10月、米経済誌「フォーチュン」のパワフルビジネスウーマン50傑に選ばれる。現在は、Office WaDa 代表として、コンサルティング、また社外取締役として経営トップへの提言をする
P&Gの場合は属システム的です。システムというと「マニュアルがあるんでしょ?」と言われるのですが、マニュアルではありません。マーケティング部門・機能の考え方や価値観を反映したジョブディスクリプションがあり、様々なタイプのタスクに「型」があります。手順が書かれているわけではないんです。型を修めた人が次の世代にオン・ザ・ジョブで、口頭で教え込む。重要なアクティビティーを、上司ではなく、教わっている直弟子が手掛けることで型が伝授されていく。マーケティング内でキャリアを積んで育つ、それが営々と続いていくんです。
ある意味、能楽や歌舞伎のような伝統芸能に似ています。代によって少しずつ芸風が違って、異なるキャラが立っているのだけど、大局的に見ると脈々と受け継がれているDNAがある。やはり型を学んで、反復練習を重ね、失敗もして、ようやく合格ラインに乗ってということの繰り返しですね。P&Gもそんなプロセスを、マーケティング部門に限らず、どの部門でもそれぞれに適したやり方で続けています。
「人は育てなければいけない」という確固たる信念、哲学がP&Gにはあります。入ったばかりの人には厳しい訓練が課されますが、22歳の新卒社員でも、型を教え込むことで育つ、育てると考えています。今、多くの企業に希薄なのは「人は育てるものだ、育つんだ」という考えとその仕組みと徹底した実行ではないでしょうか。
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