2020年6月17日にエステーを退社し、独立した鹿毛康司氏。「マーケティングとはお客さんとつながること」を持論とする同氏の最大の転機は“かっこいいマーケター”から脱却し、現場主義に転換したこと。エステーが毎年開催しているミュージカル「⾚⽑のアン」がきっかけだったという。

鹿毛氏のインタビュー前編はこちら

鹿毛 康司氏
かげこうじ事務所 代表取締役
早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。食品会社を経て、2003年にエステーへ。15年にわたりコミュニケーション領域の責任者として活動。04年から動画コンテンツを活用、07年には「ツイッターの中の人」になるなど、ネットコミュニケーションをいち早く取り入れてきた。20年6月にエステーを退社、かげこうじ事務所を設立

鹿毛さんが宣伝に携わるようになってから、技術の進歩でマーケティングはテレビCM中心の時代から大きく変わりました。その変化をどう受け止めていますか。

マーケティングテクノロジーの進化で、これまでマーケティングをできなかった企業でもできるようになりました。それまではBtoC(消費者向け)事業で大きな宣伝費を持っていないとできなかった。

 そしてテクノロジーで見えないものが見えるようになってきました。これまで持てなかったようなデータを保有する企業が登場し、マーケティングの概念が変わっています。

 ただ、1つだけ変わらないのは、マーケティングは自分たちの利益を出すため、商品を売り込むためのツールではないということです。企業とお客さんをくっつけて、より好きになってもらう。つまり、お客さんのことをきちんと考えないといけません。それがマーケティングの本質ですが、徐々にテクノロジーで効率化させることが重視され、お客さんのためという考え方が薄れてきているように思います。

 とくに若いマーケターに「そこにお客さんっている?」と聞くと、思考の中にお客さんが不在だったと気づくことも多い。消費者調査と言いつつ、お客さんのことを見ずに数字の塊だけを見ている。そこには何の感情もなく、それでは生きている人たちの心が見えてません。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大のような突然の事態においては、その手法だと調査する時間がなくデータもない。すると「策がありません」「炎上します」とネガティブになって、仕事を次々に中止しようとしてしまう。お客さんの心がない思考をしていると、人の心をキャッチできないので動けなくなります。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>