名物宣伝部長としてエステーのマーケティングをけん引してきた鹿毛康司氏が、2020年6月17日を持ってエステーを退社し、独立した。かげこうじ事務所の事業内容、企業のマーケティングの課題、マーケターとしてのキャリアづくりについて聞いた。前後編に分けてお伝えする。

鹿毛康司氏
かげこうじ事務所 代表取締役
早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。食品会社を経て、2003年にエステーへ。15年にわたりコミュニケーション領域の責任者として活動。04年から動画コンテンツを活用、07年には「ツイッターの中の人」になるなど、ネットコミュニケーションをいち早く取り入れてきた。20年6月にエステーを退社、かげこうじ事務所を設立

元々、独立は考えていたのでしょうか。

漠然と独立はしたいなと、ずっとサラリーマンという自分に違和感がありました。最も嫌いな洋服はスーツですから。特に役員に就いたときに、残りの社会人生活は淡々と仕事をこなしていく作業なんだと思って、命が削られていく感じがしていました。それをいつか打破しないといけないと考えていました。

 19年末にエステーの鈴木喬会長と食事をしているときに、唐突に「あなた、独立したらどうですか」と提案されました。それが最後の一押しとなって、独立を決めました。独立後もエステーの仕事は続けます。当面の仕事を保障してくれたことも、決断の後押しになりました。

新会社では何をするのでしょうか。

やりたいことは自分で決めることではなくて、人からあなたの力を貸してほしいと言われることが増えているので、そこに応えていけばいいと考えています。

 東北を中心に学習塾の「ベスト個別学院」を展開するGlobal Assist(仙台市青葉区)という会社を、3年ほど前から個人的にお手伝いしています。東日本大震災が起きる2年ほど前に設立された会社で現在は100教室があり、6000人を超える生徒が在籍しています。同社は震災の影響で被害を被り倒れかけていた。そのときに社長から東北を復活させたい、それには教育が求められる、鹿毛さん手伝ってくださいと相談されました。

 それを言われたら断われません。独立後は支援料をいただいていますが、依頼された当時はエステーに在籍していたため、無償で手伝うことを決めました。手伝うことになった後は、いきなりベスト個別学院の役員会に乗り込んでいき、役員陣に「皆さんの価値は何ですか、その価値を塾でどう展開しているんですか」と問いかけました。

 彼らの考えを聞いて、本当に子供たちのことを考えている人たちが集まっていることが分かったので手伝いたいと思いました。会社の売り上げや利益というのは人に喜んでもらった「喜び料」というのが持論です。そういう考え方に共感する企業の人が僕を見つけてくれて手伝ってほしいと言われれば、手伝いたいと思います。

ベスト個別学院を含め、企業の多くはコミュニケーションのどこに課題を抱えているのでしょうか。

自社の持つ本当の価値をどうやって届けたらいいかが分かっていません。多くの企業は一生懸命、仕事をしているのに、そのことを伝えきれていない。ベスト個別学院の例でいえば、他の塾と同じように夏期講習があります、学力が上がりますといったサービスや一般的な便益しかうたえておらず、心が伝わっていませんでした。そういった便益は確かに伝えるべきことですが、それよりも何が自社の本当の価値なのかを定義づけるべきと考えました。それを基に、その心を伝えられるようなコミュニケーションをしましょうと提案しました。

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