多摩大学大学院の紺野登教授は2020年6月19日、日本企業のミドル層を中心とした「知識革新度診断」調査の結果を発表する。ミドル層の危機意識の低さを痛感した紺野氏は、「志」を持った若手世代こそが新型コロナ禍にある企業の原動力になると期待している。

紺野 登氏
多摩大学大学院(経営情報学研究科)教授
1954年生まれ。エコシスラボ代表、慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招へい教授、博士(学術)。一般社団法人Japan Innovation Network(JIN) Chairperson、Futurte Center Alliance Japan(FCAJ)代表理事。デザイン経営、知識創造経営、目的工学、イノベーション経営などのコンセプトを広める。著書に『構想力の方法論』(日経BP、18年)、『イノベーターになる』(日本経済新聞出版社、2018年)、『イノベーション全書』(東洋経済新報社、20年)他、野中郁次郎氏との共著に『知識創造経営のプリンシプル』(東洋経済新報社、12年) などがある

企業が「新しい価値」を生み出せるかどうかを知識革新度診断として19年12月に調査し、20年6月に内容がまとまりました。どのような結論が出たのでしょうか。

日本企業、特に大手企業は過去30年の間に、世界のトップレベルから滑り落ちたと言えるのではないでしょうか。付加価値の高いビジネスや新しい産業を生み出すことが少なかったらです。その理由は、四半期ごとの業績にコミットするうちに近視眼的な管理体制が常態化したことだと思います。背景には、すぐに成果を上げるために、スリム化やコストダウンなどオペレーション主体の経営に注力したことが大きい。

 特に新型コロナ禍によって現在、在宅勤務などが増えています。定型業務を効率的に処理するだけなら、どこででもできるでしょう。しかし、それだけで「新しい価値」は生まれません。これからは今まで以上に新しい価値の創造やイノベーションの実践が必要になってきます。このため企業組織で今までにない「知」を生み出すための基盤を革新しなければなりません。

 そこで日本企業のミドル層を中心に約400人に知識革新度診断としてウェブで意識調査を行いました。ミドル層たちが何を考えているか、日本企業の現状はどうかなどを聞き、今後の展望につなげようとしました。しかし結果は衝撃的でした。「変化への鈍感な対応」「ビジネスモデルの危機」「希薄な目的意識と構想力の弱さ」「人材の可能性を引き出さない組織」「既存の枠組みから抜け出ようとしないミドル」など、心配な要素ばかりでした。

 例えば、今回の調査では「喫緊の経営課題は何か」「5年後の経営課題は何か」を聞いていますが、「人材の強化」「 収益性向上」など、現在と5年後への認識がほとんど同じでした。ダイナミックな経営環境の変化を意識化できず、繰り返される四半期決算にだけ適応しているミドル層の姿が浮かびます。