横浜市に本社を置くタクシー会社三和交通は、「忍者でタクシー」「SP風TAXI」などユニークなサービスが特徴だ。映像関連の元クリエイターだった吉川永一社長は、ちょっと笑えるものから、顧客の困りごとを解決するものまで、常に新しいサービスを投入し続ける。狙いは若い人に向けたブランディングにある。

三和交通社長 吉川永一(よしかわ ながいち)氏

1977年生まれ。99年よりフリーランスとしてデザイン業に従事。2000年神奈川大学経営学部卒業。02年ニューヨークフィルムアカデミー卒業。03年三和交通に入社し、07年より同社社長

三和交通ではタクシーを使ったユニークなサービスをたくさん展開しています。顧客の要望でゆっくり走るボタンのついた「タートルタクシー」のサービスは、2014年度グッドデザイン賞&グッドデザイン・ベスト100を受賞するほどです。狙いはなんですか。

一言で言うと、ブランディングのためです。運転手の高齢化が進むタクシー業界の古臭いイメージを覆し、新しいことに取り組んでいる面白い会社だとアピールしたかった。社名を覚えてもらうだけでも、他社と差異化ができます。特に新卒採用では、こうしたブランディングが効果的でした。以前は新卒採用ではせいぜい3~5人しか集まらなかったのですが、今では15~20人が来てくれるようになりました。神奈川県のタクシードライバーの平均年齢は60歳を超えていると思いますが、当社では47歳ですから若返りも進んでいます。一般のお客さまからの電話による配車依頼もずっと右肩上がりを続けていて、これもブランディングの成果だと考えています。

一方で、出産間近い妊婦さんをサポートする「陣痛119番」や、ペットと一緒に乗車できる「ペットタクシー」など、面白さと一線を画した人のニーズや気持ちに寄り添ったサービスも数多くあります。

 

妊婦さんのサポートについては、弊社も加盟していた神奈川県のタクシー会社の組合が主導して10年ごろから始めましたが、実際にやってみると非常に多くの方から登録がありました。妊婦さんは陣痛が起きて急いで病院に行きたくても「タクシーを使うと嫌がられるのではないか」「申し訳なくてタクシーを利用しにくい」という気持ちがあったようです。だから「登録しておくと陣痛のときにタクシーが喜んで迎えに来てくれる」というサービスは、すごく喜ばれました。

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