キリングループの健康系ブランド「iMUSE(イミューズ)」が絶好調だ。今年1~3月の売り上げが前年同期比で3倍以上で推移。新型コロナウイルスの影響で、健康面が着目されているという部分も確かにある。だが実は、ヒットの裏側にはキリンが周到に用意してきた戦略があった。

佐野 環氏
キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業部 部長
1971年東京生まれ。東京大学文学部卒、社会心理学専攻。94年キリンビール入社。 「氷結」の開発に従事しトップブランドに育成。2009年にマサチューセッツ工科大学でMBA取得。オーストラリアの子会社やキリンのブランド戦略部を経て16年、事業創造部(現部の前身)の部長に就任

 「iMUSE」は2017年からスタートしたキリングループの健康系新ブランド。これを統括したのが、当時キリン事業創造部部長だった佐野環氏だ。「もともとは、キリンの次の柱となるような健康領域の新しい事業を立ち上げるというのがミッションでした」(佐野氏)。キリンホールディングス(HD)はキリンビバレッジ、小岩井乳業、協和発酵バイオとメーカーを複数抱えているが、2017年以前は各社がバラバラに健康関連の商品を出しているのが現状だった。何をキリン共通の柱に据えるか。佐野氏が当時出した答えは明快だった。

 「キリンとして勝ち目があるのは、もともと持っていた発酵技術から切り出した免疫領域の研究。乳酸菌にいったんフォーカスして事業化しようと決めました」。それまでいくつか走らせていたプロジェクトはすべてストップ。同グループが2012年から商品化を始めていた「プラズマ乳酸菌」に集中し、再ブランディングに着手した。

「不確かなものは絶対に出したくなかった」

 なぜ、数ある健康関連の素材の中から乳酸菌に絞ったのか。佐野氏は「私はもともと健康食品を疑ってかかる方なんです。本当なのかな、と思っちゃう。だからこそ、健康領域をやろうと思ったら、不確かなものは絶対に出したくなかった」と説明する。キリンが乳酸菌研究に強い理由は、乳酸菌がもともと「ビールの大敵」だったからだ。「ビールをつくる工程で混じっていると、品質を落としてしまうんです」。敵を制するにはまずは知ること。そのため同社では乳酸菌研究が古くから行われていた。加えて、乳酸菌の持つ免疫活性化作用にも以前から着目。「乳酸菌領域では24本の論文を出しており、当社ではダントツのレベルで研究が進んでいた」というのも決め手となった。

 それまで各社がバラバラのブランドで出していた、プラズマ乳酸菌入りの飲料と食品。これらを一本化するための、全体を束ねるブランドイメージをどうするか。まず決まったのは「色」だった。それまで同社の乳酸菌関連商品には赤が多く、「まずはマゼンタをゼロにしたいと思っていました」。消費者調査では、青を基調とした白と金の色合いが非常に高評価だった。ブランドカラーはすんなりと決まったが、難航したのがブランド名。「今となっては恥ずかしくて言えないような名前とかもたくさんありました(笑)。でも消費者調査では全敗。200個ぐらいは出しまくったかと思います」。最後の最後で出てきたのが、私を表す「I」と、女神を意味する「MUSE」の組み合わせ。「私の中の戦う力」という思いを込めて、iMUSEに決定した。

青をベースカラーとしたブランドイメージを構築。グループ横断で共通化
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