衰退していく日本の伝統工芸を救おうとするデザイナーが辰野しずか氏だ。特に素材や加工技術の面から新しい価値を引き出そうとする。そうした考え方を反映した作品を企画展「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」(2019年10月18日から12月20日まで東京・港で開催)で発表した。
2019年11月29 日から12月1日まで、京都にて展覧会「TAKUMI CRAFT CONNECTION -KYOTO by LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」が開催された。16年から18 年まで、日本各地の工芸家や職人などの若き「匠(たくみ)」を発掘、支援する活動を続けてきた「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」。19年はその一区切りとして、これまでに発掘した150人の匠の中から6人を選抜し、5人のクリエイターとのコラボレーション作品を制作した。そのクリエイターの1 人に選ばれたのが辰野しずか氏。薩摩切子職人の鮫島悦生氏とのコラボレーションによる新作グラス「grad.」を発表した。
一方、素材ライブラリーとコンサルティング機能を備え、さまざまな素材や加工技術と、デザインや開発とをマッチングする「マテリアルコネクション東京」(東京・六本木)では、企業とデザイナーが組み、素材や技術の新しい価値を見いだす過程を展示する企画展「MATERIAL DESIGN EXHIBITION」を15年から毎年開催している。19年は10月18日から12月20日まで開催し、2組の企業とデザイナーの取り組みを展示した。その1組が、辰野しずか氏とステンレス・意匠鋼板を手掛ける月星アート工業(兵庫県尼崎市) による、ステンレス加飾技術を生かした作品だ。
「Mist」「Cloudy」など、空や大気をテーマにしたステンレス製のスツールは、鏡面加工やエッチング、バイブレーションやヘアラインなどの研磨加工をはじめ、同社のステンレス加工技術を集大成した。例えば、ヘアラインの幅を少しずつ変化させていくことで、単色のステンレスの上に、奥行きのある「質感のグラデーション」を作り出している。
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