ZOZOSUITはなぜうまくいかなかったのでしょうか。

 良くも悪くも、急ぎ過ぎたのかなと思います。ネットサービスのように小さく試して、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回して、ちょっとずつ大きくすれば良かったのかもしません。

GAFAに対する「焦り」が失敗の理由

 ですが、生産、計測、ECでの販売を垂直立ち上げして走り抜けないとGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)にまねされてしまう、天下を取れない、という前澤さんの危機意識というか、必然性がありました。事後的には「焦り」と言われても仕方ありませんが、これをやりきらないと世界に打って出る可能性が閉じてしまう。そんな危機感は正当だったとも思います。

 一般論としてはZOZOSUITのようにデータを取って、パーソナライズするというストーリーはまだ十分可能性があると思います。ネットバブルのころ、ネットスーパーがうまくいかず、ネットで野菜や肉は売れないとバカにされた。ですが、今では当たり前のように販売されています。同じように時代が変われば、成功する余地が残されていると感じます。

 子会社のZOZOテクノロジーズで広告ビジネスに携わっていく、あるいは買収後にヤフー、またはLINEの広告ビジネスをやろうとは考えなかったのでしょうか

  ZOZOテクノロジーズの広告ビジネスは、僕からすれば、それがやりたくて入ったわけではありません。それをやるならLINEにとどまっていたほうが良い。

 (オンラインサロンの)「田端大学」で、(動画SNSの)「TikTok」の相談を受けた時には、まるで5~6年前のLINEのように感じました。急速に利用者が拡大しているものの、広告ビジネスが整っていない。中国法人と日本法人の関係は、かつてのLINEの親会社のネイバーとLINEの関係のようにも見えました。そういった知見も私は持っていますが、そこに携わるのは再放送のドラマのようなもので、自分にとっては今更やっても仕方のないことのように思います。広告ビジネスの営業に戻りたいという気持ちはありません。

 それにメディアのバイイング予算がなくても、それで話題を作って、ユーザーを獲得することもできます。ZOZOSUITはすべて広告費として計上していましたから。メディアの予算の最適化でどうこうとかいう時代ではありません。Zホールディングスの子会社になり、ヤフーやLINEと融合して、(ZOZOの)ROI(投下資本利益率)を改善するという仕事はあるかもしれませんが、僕よりもっとできる人はいるんじゃないかと思っています。

 LINE、ZOZOと大手ネット企業を経て、ネット業界、ネット広告業界の変遷をどう見ますか。

 成熟したことは間違いありません。学生がその辺のネット企業に入社するといっても、親から反対されることもなくなっているでしょう。ネットはインフラになったからそれは必然です。もはや深夜放送ではなく、新聞やテレビになったようなもの。そこから先、インフラであるプラットフォームを利用して、一個人が活躍できるサービスはまだ2合目ぐらいなのではないかと思っています。

 こんまりさん(片付けコンサルタントの近藤麻理恵さん)みたいな人は、中途半端な会社よりも世界的にプレゼンスがあります。スマホやパソコンは個人をエンパワーメントするものなので、ネットというインフラのステージが進んだものと捉えています。

 D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)と呼ばれる新しいモノづくりが、インスタグラマーと結びついているのは第1段階。ネット的なものの本質は、エンド・トゥ・エンドが握手できること。GAFAの存在が大きくなるほど、エンド・トゥ・エンドのユーザーのつながりが強くなることがポストソーシャルメディアの本質だと思います。

(写真/山田 愼二)