世界的なクリエーティブディレクターであるレイ・イナモト氏が率いるI&CO(アイ・アンド・コー)は、2019年7月に東京オフィスを開設した。同氏は日本企業のデジタルシフトの遅れに強い危機感を抱いている。開発を手掛けた「UNIQLO IQ」誕生の背景、デジタルシフトを進めるポイントについて聞いた。
これまで米国を中心に活動していた。なぜこのタイミングで日本にオフィスを構えたのか。
日本企業から、デジタルシフト推進の相談を受けることが増えているのが理由だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、物事が大きく変わるターニングポイントになる。オリンピック以降の日本はどうなっていくのか、先が見えない状況だ。1964年の東京オリンピックのころと違い、今の日本は完全に成熟市場。80年代、90年代には日本の企業が世界の経済をリードしていたが、今はそうした企業ですら世界で戦えていないのが現実だ。
これまで日本という市場がそこそこ裕福だったため、日本で成功すれば企業にとって十分な売り上げを上げられた。だが、それは通用しなくなる。オリンピック以降、高齢化が進めば、今後の日本は観光客に頼った市場にならざるを得なくなるだろう。
そこでオリンピックを前に、東京にも拠点をつくり、グローバルを視野に入れた企業経営を支援していく必要があると考えた。私は日本人として海外に出たことで、日本の良さが身に染みた。平成から令和へと移り変わり、オリンピックを迎えた後、日本企業が世界を舞台に活躍できる土台作りを手伝っていきたい。
具体的にはどのような支援サービスを提供するのか。
会社の立ち位置として、コンサルティング、デザイン、コミュニケーションを横串しにして、より実現性の高い提案を経営層にしていく。これまでコンサル会社、デザイン会社、広告会社が流れ作業で物事を考えることが多かった。例えば、企業のトップが会社の将来を考える上で最初にコンサルに相談を持ち掛ける。すると市場分析や戦略の立案など、数百枚に及ぶ資料が出来上がる。
しかし具体性に欠くため、デザインファームやイノベーションファームに具体的な将来像を依頼する。ある程度のコンセプトムービーには落とし込まれるが、今度はあまり現実味がない。最終的に具体策を広告会社が考えることになり、当初の想定とは大きくかけ離れてしまう。こうしたことをなくしたい。
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