東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)は2019年7月、東京2020大会のオリンピックメダルのデザインを発表した。リサイクル金属100%で作られたメダルはオリンピック史上初。そのデザインに込められた意図とは。
SIGNSPLAN 代表 サインデザイナー
SDA 公益社団法人日本サインデザイン協会 常任理事
USD-O 大阪デザイン団体連合 理事
開催国がデザインできるのは裏面のみで、組織委員会は入賞メダルのデザインコンペティションを実施。421人の応募作品の中から大阪のデザイン事務所、SIGNSPLAN代表の川西純市氏のデザインを選出した。
東京2020大会の入賞メダルは、全国から提供された使用済みの携帯電話など、小型家電から抽出した金属を再利用して製作することでも話題だ。17年4月から19年3月末まで自治体やNTTドコモで回収し、約5000個製作する金・銀・銅のメダルに必要な分量の金属を回収。100%リサイクルによるメダルはオリンピック史上初となる。
アスリートの思いを光で伝える
川西氏がデザインしたメダルは、曲線を立体的に組み合わせた抽象的な表現だ。工芸品のような造形美が特徴。シンプルなデザインだが、実は仕掛けがある。勝者となったアスリートが表彰台の上に立ったとき、首から提げたメダルにスポットライトやカメラのフラッシュなどの無数の光が反射することを想定し、多面的に設計しているのだ。光や輝きをテーマに、アスリートがつかむ栄光と努力の日々を、磨くと光るダイヤモンドの原石に重ね合わせてデザインしたという。
「選手の喜びの気持ちはもちろん、支えてくれたり応援してくれたりした人たちへの感謝の気持ちを、メダルを通して表現できないか考えた」と川西氏。その視点は、日ごろの仕事と通じる部分があるという。
川西氏は主に、商業施設や学校、病院、ホテル、オフィスなどの案内表示、サインデザインを手掛けている。川西氏は「施設の特性にもよるが、単に人を誘導するだけでなく、温かみがあったり、ちょっと笑えたり、コミュニケーションが生まれたりするような、施設の持ち主や運営する人の気持ちを代弁するサインを目指している」と話す。その考えをメダルデザインに取り入れた。メダルが放つ光は「アスリートの気持ちを代弁したサイン」なのだという。
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