ニトリが求めるのは、小売業志望でない人材

インターンでものづくりに注力した理由は。

永島 ニトリを「新しいことを始めたい」という人の集団に変えるためです。直近の2年間、新卒だけでも約1200人を採用しました。当時はメーカーや金融志望の学生が集まるような場にひたすら出かけてアプローチを続け、結果的に新入社員は小売りを目指していなかった人がほとんどになりました。「将来やりたいこと」として、グローバル展開をはじめ既存の事業を新たな方向へ広げていくといった、「その先」を考えてくれている人ばかりです。

 楽天が運営する「みん就(みんなの就職活動日記)」の調査によりますと、それがデータとしてはっきり現れています。うちに興味を持っている人がほかにどんな会社を気にしているかというと、メーカーを筆頭に、商社や金融、保険などばかりで、小売業や流通を志望している人はほとんどいません。

 もちろん、入社後は小売りの現場も体験します。しかしそれはその先の「やりたいこと」を実現するための勉強でもある。この点はエンプロイー・ジャーニーマップを使ってしっかり理解してもらおうと思っています。

小売り以外を志望する学生を採用したのは新規事業への対応ですか。

永島 新規事業として新しいフォーマットの開発や宿泊施設の開業を進めていますが、その専門家を育てるようなことはしません。本当に専門性が必要なところは外部の方を受け入れたりしますが、運営に当たるのはニトリのコアコンピタンスをしっかり理解している人間、つまりニトリの社員が担当します。ニトリの理想は、社員全員が顧客のニーズを商品やサービスとして提供できることなので、新規事業のためだけの人材を採用することはありません。

人事以外の分野でニトリが他社と比べて面白い点は。

永島 ニトリは取り扱い商品の80%がPB(プライベートブランド)です。商品の企画・バイイングから製造・販売、そして顧客の自宅での商品の組み立てまで行います。カスタマー・ジャーニーのすべてをニトリ1社で網羅しています。

 でも、面白いことにマーケティングを担当する専門部署はありません。実はテレビCMのシナリオを考えているのは、広告代理店の人ではなく、店舗に勤めるパートの方なんです。これは会長(似鳥昭雄氏)の考えなのですが、「顧客を一番理解しているのは媒体や代理店ではなく、うちの店員だ」と。だからテレビCMのシナリオは店員からの公募で選んでいます。シナリオが選ばれると、そのテレビCMの撮影に立ち会えるんです。一種のインセンティブですね。

 全店、全店員、全社員でマーケティングをしていくのがニトリのやり方です。だから「競合はどこ?」「シェアはどのくらい?」という質問は、人によって口にする数字が違ったりします。店舗数が増えていながら既存店の売り上げが前年を上回っているなら、それはバリューを生んでる証拠。そこさえ踏まえていれば他社との比較に大きな意味はないという考えですね。

PBの開発などはどのようにされているのですか。

永島 バイイングを担当する社員は何かを買い付けるだけでなく、「開発バイヤー」として自分で工場を探して製造まで面倒を見ます。余計なコストなどをかけずに、PB商品で気軽に豊かな暮らしを楽しんでいただけることがニトリの一つの理想です。転職当時はここまで独創的な会社だとは気づいていませんでしたけどね。

(写真/中村宏、写真提供/ニトリホールディングス)