追随する企業が増えてきたのはウエルカムだ

別所さんが日本で初めてショートショートの映画祭を創設されたきっかけも、海外で同様の映画祭を見て、そこに将来性を見込まれたからでしょうか。

別所氏 最初に見たサンダンス映画祭は、昔ながらのスキームを引きずっている部分もあった。ただ98年のサンダンス映画祭で見た光景は忘れられない。シリコンバレーやカリフォルニア州からやってきた“エンジェル”と呼ばれる投資家たちが、5000ドルの小切手を切って「ショートフィルムの配信権を1年間買わせてくれ。インターネットの音声配信の次は動画配信がやって来る。そのときの主人公は、必ずショートフィルムになる。映画は情報だ」と言い切っていた。

高岡氏 NHKの朝ドラは実質15分もない。それが半年ほど続けば映画になるということ。1本1本毎日見ているのがショートムービー。

5~10分の1本でストーリーを完結しなければならないのがブランデッドムービーですよね。独特の作り方はありますか。

高岡氏 あります。作り方が変わるから芸術性が損なわれるという話ではない。別のアートです。

別所氏 デバイスも表現も変わる。朝ドラは1本1本で抑揚を付けて次を見たいと思わせなければいけない。それを面白がれるかどうかだ。

ショートムービーに対する日本での受け止められ方はどう変化しましたか。

別所氏 ずいぶん変わったと思うが、これからアウトプットやビジネスプラットフォームとして成熟させるためには、まだまだプレーヤーが増えなければいけない。

別所氏はショートムービーを国内で成熟させるためにプレーヤーがまだまだ必要だという
別所氏はショートムービーを国内で成熟させるためにプレーヤーがまだまだ必要だという

今後の展望を聞かせてください。

別所氏 21年間、祭りをやってきた。人間には祭りが必要だし物語る動物だと思っている。つまりコミュニケーションをとるということ。そこに必要な情報がそろえば、企業側の思いとコンテンツを楽しみたい人が出合う場所が必ず必要になる。その出合いの場を作っている。表現者としても、そこに一生をささげていきたい。

高岡氏 20世紀にやってきたものをデジタル化して、どうやって新たな物を作っていくか。その競争の時代がおそらく21世紀で、コミュニケーション手段の1つとしてショートムービーがあった。それを企業として使っていかなくてはいけないし、コンテンツとしても十分楽しめる素材になっていくのは間違いない。追随する企業が増えてきたのはウエルカムだし、業界全体にとっていいことだ。これからさらに進んでいくだろう。それを一緒にやっていけたらいい。

高岡浩三(たかおか こうぞう)氏
ネスレ日本社長兼CEO

1983年、神戸大学経営学部卒。同年、ネスレ日本入社。各種ブランドマネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリーマーケティング本部長として「キットカット受験生応援キャンペーン」を手掛ける。05年、ネスレコンフェクショナリー社長に就任。10年、ネスレ日本副社長飲料事業本部長として新しい「ネスカフェ」のビジネスモデルを構築。同年11月ネスレ日本社長兼CEOに就任。「ネスカフェ アンバサダー」などの新規ビジネスモデルを通じて高利益率を実現する一方、人事や営業などの管理部門も含め、あらゆる部門に「マーケティング」を採り入れ、“グローバルに通用する成熟先進国ビジネスモデル”の構築に力を注ぐ。
別所哲也(べっしょ てつや)氏
ショートショートフィルムフェスティバル代表/俳優/ラジオパーソナリティ

1990年、日米合作映画『クライシス2050』でハリウッドデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台・ラジオなどで幅広く活躍中。「レ・ミゼラブル」、「ミス・サイゴン」などの舞台に出演。99年より、日本発の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル」を主宰し、文化庁長官表彰受賞。観光庁「VISIT JAPAN 大使」、映画倫理委員会委員、外務省「ジャパン・ハウス」有識者諮問会議メンバーに就任。内閣府・世界で活躍し『日本』を発信する日本人の一人に選出。第1回岩谷時子賞奨励賞受賞。第63回横浜文化賞受賞。

(写真/酒井康治)