課題は今まで着ていた鎧(よろい)を脱げるか

「インフルエンサーマーケティング」も古いという声が聞かれますが。

高岡氏 古いです。映画の(プロダクト)プレースメントも古い。

今後のマーケティングで大切な事は何ですか?

高岡氏 顧客の問題を見るということ。顧客の問題が変わっていくからこそ、今まで売れた物が売れない。問題解決をしてくれる物が他にあれば、そっちへ流れてしまう。大事なのは、商品を売っているのではなく問題解決を売っているということ。

 映画界も同じで、映画監督が困っている。監督は歩合制だが助監督は出来高制なので、助監督のほうが収入が安定しているといわれている。それなら90~100分間の映画でリスクを取るよりも、CMに代わるブランデッドムービーに参画したほうが確実にもうけられるという話を、何人もの映画監督にした。最初に本広克行監督が賛同してくれた。

別所氏 今まで着ていた鎧をどれだけ脱げるかが課題だ。自分たちの固定概念や、やってきたことへの誇りもあり、鎧はなかなか脱げない。しかし明治時代、“ラストサムライ”になる可能性があるときに刀を置き、ちょんまげを切って、袴(はかま)を脱いで洋服を着た。あの価値観のコペルニクス的転回に、今やエンターテインメントだけでなくすべてのビジネス業態が直面している。

 にもかかわらず日本は、グーグルやアマゾンといった「GAFA」が台頭して若い人に対して盛んに投資してきたこの30年、手つかずできてしまった。もちろん素晴らしい起業家はいる。その人たちが世界のマーケットで戦えるようになるには、鎧を脱がなくてはならない。

高岡氏 ブランデッドムービーに賛同してくれたのは本広監督のほか、後に『きみの膵臓を食べたい』を撮る月川翔監督もいた。月川監督のブランデッドムービーに出演したのは、広瀬すずさん。あのときに共感して乗ってくれた人は、やはりすごい人が多い。

ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2019で上映したネスレのブランデッドムービー「上田家の食卓」の平林勇監督。自身の短編映画がカンヌ、ベルリン、ベネチア、ロカルノ、サンダンス映画祭で上映されている
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2019で上映したネスレのブランデッドムービー「上田家の食卓」の平林勇監督。自身の短編映画がカンヌ、ベルリン、ベネチア、ロカルノ、サンダンス映画祭で上映されている

別所氏 ブランデッドムービーやショートフィルムという僕らが創った装置は、新しい時代を作る人をインキュベートする側面もある。固定概念にとらわれていると難しい。