店頭での肌測定実施率5%が肌測定アプリを生んだ
オプチューンはスマホのカメラで撮影するだけで肌の状態を測定できます。この技術について教えてください。
川崎 17年9月に開発した「肌パシャ」という肌測定アプリの技術を応用して搭載しています。スマホのカメラで撮影した肌画像から肌のきめ、水分、皮脂、毛穴の状態を算出できます。店頭カウンター専用の肌測定機器を開発しているスタッフが、蓄積したノウハウを結集して開発したので、スマホカメラの精度でも分析できる技術には自信がありました。
肌パシャを開発したのは、店頭カウンターで機器を用いた肌測定を受ける人の割合が全世代で5%と低く、もっと自分の肌に関心を持ち、理解して商品を選んでほしいという思いからでした。実際に測ってもらわなければ、せっかくの技術力も発揮できません。肌パシャのダウンロード数は資生堂のアプリ全体で最速の伸びを記録しました。
今振り返れば、これがパーソナライゼーションのスタートですね。
ベータ版のロイヤル顧客は他社ユーザーという意外な事実
ベータ版で得た知見を教えてください。
川崎 最も知りたかったのは、本当にこのサービスにニーズがあるのかということ。そのためベータ版はオールターゲットに設定しました。若い学生から40~50代の専業主婦までさまざまな属性の方に利用してもらった結果、「30~40代の充実しつつも忙しい女性」のニーズが最も高かったので、本格展開のターゲット層にしました。
途中で脱落(使用を中止)したのは、言われたものでなく自分で使うものを調節したい人や、化粧品が大好きで新しいものが出ればそれを試したいという人でした。
一方ロイヤルユーザーは、忙しくてスキンケアを選んだり日々の肌の調子に合わせたりする手間はかけられないが、美肌を求める気持ちの強い人たち。オプチューンと価値観が合ったのだと思います。意外なことに普段は他社の化粧品を使用している人が多く、まだ仮説段階ですが、資生堂のロイヤルユーザーはほぼいない傾向が見られました。
日々の肌情報を蓄積することで最適なスキンケアの精度が上がる仕組みは、サブスクによる課金ととても相性がいいと思いますが、ベータ版では都度購入してもらっていたものをサブスクにしたのはなぜですか。
川崎 お客さまの要望です。ベータ版ではカートリッジがなくなる前に通知する機能はありましたが、その都度購入してもらっていました。ユーザーから「資生堂を信頼してスキンケアの配合を任せているから、自動的に配送してくれたらいいのに」と言われたのです。
実際、カートリッジの買い忘れで脱落する人も少なからずいました。サブスクにすることでより長く肌データを得られて、長くお付き合いできる利点もあるため、本格展開ではサブスクを選びました。
月額1万円(税別)という価格はどうやって決めたのですか。
川崎 値付けについてはかなりディスカッションしました。正直、マシンの価格を含めれば1万円では到底収まらない。リスクを考慮すればマシン自体を販売するほうがいいかもしれませんが、家電メーカーでもないのにマシンに対価を払ってもらうのは資生堂として選択できない。ソリューションを買ってもらおうと。
ベータ版では、1本2800円(税別)のカートリッジで約1カ月半持ちました。1台のマシンに5本セットして使用するため1年間で12万円強になり、それを月額に計算しました。他にもユーザーや市場の調査結果も考慮して決めました。サービス全体に対する対価と考えています。
申し込み状況はいかがですか(19年7月8日現在)。
川崎 具体的な数字は申し上げられませんが、着実にユーザーが増えています。