世界中で「ユニコーン」と呼ばれる成功したスタートアップ企業が次々と生まれている。今、注目すべき地域はどこなのか。そして日本はどうなのか。世界70を超える国の約2300社に投資する米国のベンチャーキャピタル「500 Startups」のパートナーであるマーヴィン・リャオ氏に聞いた。
500 Startups パートナー
世界中のスタートアップに投資していますが、特に注目している地域はありますか?
「500 Startups」は世界中の2300ものスタートアップ企業に投資しており、自分たちほど世界中を回っているところはないと思います。才能は世界中のどこにでもあるものですが、残念ながら米国、特に我々が生まれたサンフランシスコ・シリコンバレー地区のように、スタートアップを育てるエコシステムが整っている地域はそう多くはありません。そこで我々は有望な初期段階のスタートアップ企業に少額出資し、アクセラレーターとして成長のノウハウを教える役割を果たしています。
サンフランシスコ・シリコンバレー地区のエコシステムとは何か。成功したベンチャー起業家が集まっており、彼らの経験をオープンにして次の世代の起業家に対してシェアしています。ノウハウだけでなく、場合によっては資金も提供します。“pay forward(ある人物から受けた恩を、別な人や次の世代に返していく)”の文化ですね。これは、払ったものへの結果を求めるニューヨークの文化とも違います。
そういった意味では、イスラエルのテルアビブはカルチャーが近いような気がします。スウェーデンのストックホルムも同様の文化があります。
米国で注目しているのは、まずロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ。これらの都市にはもともと強い会社がありますし、投資マネーも豊富です。一方、技術面ではシアトルやソルトレークシティー(ユタ州)、オースティン(テキサス州)が面白い。ソルトレークシティーはBtoBのスタートアップが多いです。
米国以外では、カナダのトロント、モントリオール。欧州ではロンドン、ベルリン、パリ。パリのスタートアップは急速に成長しています。
アジアではシンガポールとジャカルタに注目しています。中国の北京や深センなどはAIや自動運転、バイオテックに強みがありますが、グローバルかと言えば少し違う、ドメスティックな発展をしていると思いますね。
日本はどのような位置にいますか?
素晴らしい技術もありますし、資金力もある。勤勉だし、消費者が新しい技術を受け入れる土壌もある。本来はいいポジションにいるはずです。しかしカルチャーに問題があります。
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