2019年2月発行の『“オフィスのプロ”だけが知っている キングジム 人も組織もうまくまわりだす 超整理術213』は組織全体での文書管理を勧める。オフィス事務用品メーカーならではのノウハウなどが話題となり、約1カ月半で3刷まで増刷された。執筆した同社の矢次信一郎氏に話を聞いた。
キングジム ファイリング研究室コンサルタント
オフィス環境の大きな変化が執筆の背景に
今回の出版に至った経緯を教えてください。
矢次信一郎氏(以下、矢次) ビジネスパーソンに向けた整理術としては、07年に日経文庫から『ファイリング&整理術』を最初に出版しました。その後、オフィスを取り巻く環境が大きく変化しました。例えば情報技術は景気の波ともシンクロしながら、約10年周期で大きな革新を遂げてきており、情報管理の在り方も大きく変わった。
さらに働き方改革で、いかに無駄を省いて効率的な時間配分をするかということも考えなくてはいけなくなりました。災害時などのテレワークなど、オフィスへのニーズもますます多様化していき、危機管理も強く問われています。
文書管理は一見地味な作業のため優先度を下げがちですが、おろそかにすると書類を探したり無駄なコピーをしたりと、時間や空間へのコストがかかりやすい。きちんと情報を把握できていることが、危機管理にもつながっていくのです。整理は「定品・定位置・定量」が鉄則です。
しかしファイリングや整理について、きちんと教わったことがない人がほとんど。企業やオフィスの慣習に従うだけになってしまっています。そこでオフィスの“困った”を解決するため、現代版にアップデートしました。
主な読者ターゲットはどこに設定していますか?
矢次 新世代を担うリーダーとして、20~40代のビジネスパーソンを想定しています。オフィスの環境が変化しても、ファイリングの考え方や基本技術は変わりません。ファイリングの目的は、「組織の維持・発展のためにいかに重要な情報をすぐに取り出すか」です。
これからトップを目指す若いビジネスパーソンはもちろん、現在トップを務めている人の意識も変えていきたいと考えています。
意識改革からトップの取り組みまで段階的に解説
本著は6つのパートに分かれている。パート1で整理への意識改革を促し、パート2~3では個人での取り組みや有効なツールを紹介している。パート4でデジタルデータ管理のノウハウを示し、パート5~6ではトップの取り組み方について言及している。
個人レベルからトップ目線に段階を踏んだのはなぜですか?
矢次 まずは本書を読んでいただくきっかけとして、意識改革のパートを書きました。整理は重要だからこそ簡単にできる技やツールを紹介して、関心を個人レベルで持っていただき、そこをベースにリーダーとしての取り組みまで定義できる構成にしました。
パート2では、整理に対する面倒くさいという思いを取り払うため、個人としてメリットを感じてもらえるようデスク周りの整理術を紹介しています。そこから組織として取り組めば、レベルアップにつながっていきます。整理は工夫して便利を感じることの積み重ねで習慣化していきます。
文書は「発生 → 流通・加工 → 活用 → 保管or廃棄」のサイクルをたどるのですが、個人のデスクをすっきりとする工程で、この基本の流れを学んでもらいます。
パート3では実際に作業を効率化して、時間を生み出すためのアイテムを紹介しました。さらに重要なメッセージとして、「急いでやる必要はない」ということもお伝えしています。日々忙しい中で「整理する時間がない」と思うことが危険なので、焦ってまとめてやるよりも毎日少しずつでも取り組む時間を作り、習慣化してもらうことが大切です。
パート4はデジタルデータの整理術です。机周りは整理できても、パソコンの中はぐちゃぐちゃという人も多い。「パソコンに保存すれば紙を減らせる」でとどまると、むしろ文書探しの手間を増やすことになりかねません。そこで紙文書と電子文書の特徴を理解してもらうことの大切さを説明しました。
パート5~6は、特に社長や部署のトップの方に読んでいただきたいです。組織全体での分類体系づくりが肝要で、トップダウンがないとせっかく決めたファイリングのルールが維持できないんです。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー