キリンビバレッジの「キリン 生姜とハーブの温もり麦茶 moogy(ムーギー)」は、ECサイトのみで販売している健康麦茶だ。2016年に商品化した。販売数量は年々拡大しており、18年の年間出荷数は前年比約1.5倍だったという。

(左から)キリンビバレッジのマーケティング本部 商品担当の遠藤楓氏、嶺岸秀匡氏、営業本部EC担当の水上寛子氏、マーケティング本部商品担当の寺島愛子氏。 水上氏と寺島氏、遠藤氏はデザイナーでmoogy開発当初からのメンバー。中身のコンセプト、ネーミングをはじめ、パッケージデザイン、イベント企画などトータルで手掛けている。嶺岸氏は販売を強化していくために、19年1月からメンバーに加わった

 moogyは当初、ネット通販サイト「LOHACO」の先行商品だったが、17年秋からは販路を拡大し、現在はAmazonやセブン&アイ・ホールディングスのオムニ7などのECサイトでも販売している。販売数量は年々拡大しており、18年の年間出荷数は前年比約1.5倍だったという。

 売れ行きが好調な理由は、ECのみの販売という特徴を生かした独自のマーケティングにある。その仕掛け人が、キリンビバレッジの商品担当、水上寛子氏と寺島愛子氏、遠藤楓氏、嶺岸秀匡氏の4人だ。

 moogyのメインターゲットは、20代から40代の女性。ターゲットと同世代であるデザイナーの水上氏と寺島氏、遠藤氏の3人がmoogyの世界観をつくり込み、自ら情報発信まで手掛けている。「ECだからこそできるデザイン」を追求するために、中身や味のイメージなどはパッケージから排除し、情報はすべてWebサイトに集約。これによりデザインの自由度が上がり、今までの飲料にはない生活雑貨のようなかわいいパッケージが実現した。

moogy 2019 spring collectionのビジュアル。パッケージの柄には名前が付けられている。左から「春の芽吹き」「タンポポのしらせ」「クローバーの丘」「春のいっぷく」
moogy 2019 spring collectionのビジュアル。パッケージの柄には名前が付けられている。左から「春の芽吹き」「タンポポのしらせ」「クローバーの丘」「春のいっぷく」

 「自分たちだったら、どんなパッケージの飲み物に愛着が持てるか。LOHACOのブランドイメージと、デザインイベントで掲げていた『日常の暮らしになじむ』というテーマを重ね合わせながら、世界観をつくり込んでいった。SNSでの広がりを意識し、ついつい投稿したくなるフォトジェニックなデザインを目指している」(寺島氏)。

 季節によって選ぶ服やインテリアが変わるように、その日の気分やファッションで飲み物も選べたら楽しいはず――。そんな思いから、パッケージデザインはシーズンごとに衣替えし、四季を感じる絵柄を年間16柄用意している。

 実は16年の発売当初は、洋服のコレクションのように春・夏と秋・冬の年2回、各16柄、年間32柄そろえていた。ただ、24本入りの1箱に入る柄の数は最大4種類で、購入時には柄を選べなかった。そのため「欲しかった柄が届かない」「同じ柄ばかりが届く」といった声があったそうだ。

 そこで、18年からは1年で季節ごとに4回リニューアルし、各4柄、年間16柄で展開するようにした。「バリエーションを少なくすると選ぶ楽しさが減り、ファンが離れてしまうことを懸念していた。だが結果的には、購買したくなるピークが年4回に増えたことで、出荷数を伸ばしている」(水上氏)

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