奈良県・安養寺の住職が立ち上げた「おてらおやつクラブ」。2018年度グッドデザイン大賞を受賞した、貧困問題の解決に向けた活動だ。誰でもまねできる仕組みが評価され、支援の輪が全国的に広がっている。

特定非営利活動法人おてらおやつクラブ代表理事、安養寺住職の松島靖朗氏
特定非営利活動法人おてらおやつクラブ代表理事、安養寺住職の松島靖朗氏

おてらおやつクラブは、寺に届く「お供え」を仏様からの「おさがり」として頂戴し、経済的に困難な家庭に「おすそ分け」する取り組みです。2013年に大阪市で起こった母子餓死事件を機に、活動を始めたそうですね。

松島 お寺には、さまざまなものがお供えされます。その中心は食べ物で、食べきれないことは個人的な悩み事でした。その一方で、大阪の事件をきっかけに、餓死するほど食べ物に困窮している一人親の家庭があることを知りました。お寺には食べ物がたくさんあるのに、社会の一部にはない。それらをつなげることで、私自身の個人的な悩み事を解決できるのではないかと考え、活動を始めました。

 大阪の事件を機に、母子家庭などを支援する団体が立ち上がったことを知りました。そこで、まずは果物やお米、洋菓子などお供えものを段ボールに詰めて持って、相談に行ったんです。そうしたら、大阪で暮らす一人親家庭を2世帯、紹介していただいた。それから3カ月ほど毎月、支援団体を通じて、お供えを送りました。独りよがりになってはいけないので、お供えの品をどのように受け取ってくれているかを支援団体に聞きにいくと、「すごく喜んでくれている」と。

 しかし、「他にも配ってあげたい家庭があって、実は全然足りていないんです」とも言われ、はっとしました。私は「お供えの品を食べきれない」という個人的な課題が解決できて安心していたからです。しかし、実際にはもっと大きな支援が必要だと分かり、とても考えさせられました。それで、地元の他のお寺にも声を掛けて、支援の輪を広げていきました。

参加寺院は全国で1000を超え、おやつを受け取る子どもは延べ約1万人(月間)という規模になりました。支援の輪を広げるために工夫したことは?

できるだけ敷居を下げ、誰も無理をせずに活動を続けられることを意識しています。お寺にお供えが集まったら支援団体に送り、食べ物に困窮している家庭に届けてもらうというシンプルな仕組みです。現在は1つの支援団体に3つくらいのお寺をつなぐようにしています。そうすることで、どこかのお寺から毎月必ずおすそ分けの品が届くようになるからです。お寺は無理せず、自然とお供えがあるときに協力することができます。支援の輪が広がってきてから、そうした物流の調整などもできるようになりました。

おてらおやつクラブというネーミングも、参加のしやすさに影響していると思います。松島さんが考案したのですか?

思いつきなんですけどね(笑)。全国のお寺と支援団体に情報を発信していくためにも、2014年1月ごろ、活動に名前を付けました。「おやつ」は、すぐに思い浮かびました。「クラブ」は、いろいろな人が参加できる活動にしたいと思ったのと、子どもたちがお菓子を食べる放課後をイメージしたものです。ただ、普通のお菓子ではありません。お寺のお供えものなので、「おてら」を付けました。

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