日本オラクルの初代代表を務めたアレン・マイナー氏。その後はベンチャー企業への投資に20年近く携わってきた。そのマイナー氏が、データ活用ビジネスの一線に帰ってきた。同氏に、2020年代を迎えようとする今、データ活用ビジネスのトレンドと、その重要性を尋ねた。
マイナー氏をデータ活用ビジネスに復帰させる後押しをしたのは、20年前とは異なるデータ活用の広がりが一因で、まだ「これが決定的」という技術がないことだ。そこに面白さがあると考えている。2010年ごろまで、データベースソフトは米オラクルのOracle Database、米IBMのDb2、米マイクロソフトのSQL Serverなど数えられる程度だったが、今ではオープンソースのソフトやクラウド専用データベースソフトなど多様化が進み、種類も非常に豊富にある。
データを蓄積して検索できるようにするデータベースは、企業があらゆるデータを活用して処理するための基本になるものである。マイナー氏は、オラクルに入社した1986年以来、データ活用の変化を見てきた。「Excelのようなスプレッドシートでは管理しきれない膨大なデータは、いくつもの表を関係づけて整理するRDB(リレーショナルデータベース)によって活用できるようになった。1980年代、90年代以降、企業のあらゆるデータを整理・検索して、経営計画を立案したり、工場の運用を最適化したりするために広く使われている」。
RDBで多くのデータを処理して効果を得てきた状況にも、徐々に環境の変化が押し寄せた。「デジタルカメラの普及やグーグル検索の流行などに伴い、扱うデータの質がだんだん変化した。ユーザーの家族構成やECサイトの買い物履歴、SNSの友人関係など、企業が利用したいデータはさらに膨大になり、RDBでは世の中のすべてを把握できるような整理の仕方に対応できない部分が増えてきた」とマイナー氏。多くの課題に対応できるようRDB管理システム(RDBMS)の種類が増えてきただけでなく、RDBとは異なる方式で高速処理を実現するNoSQLデータベースや、高速演算に適したGPU(Graphics Processing Unit)を用いてデータベース処理のスピードアップを実現するような手法も広がってきた。
今後の方向性としてマイナー氏が指摘するのが、「世界中のデータを1つのメインフレームなどに集約して処理することが、想像できなくなっている」ということ。情報が増加の一途をたどり、全世界のデータを格納して処理できるようなハードウエアを構築することも、それを管理するソフトウエアをつくることも、現実にそぐわない。そうした状況では「安いコンピューターを分散してばらまいて、それぞれを連携して処理結果を得ることが必然になっている。企業が利用したいデータも、文字や数字で表をつくれるような構造化データだけでなく、音声や映像などの非構造化データにまで広がっている。1つのハードウエア、1つのソフトウエアだけで処理するのではなく、適材適所の技術を使って必要な結果を求めることが大切」(マイナー氏)。
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