2018年10月、ダイソンが発表した新製品「エアラップ スタイラー」はヘアケア家電。同社にとって新たな挑戦となる。ダイソンのチーフエンジニア(照明カテゴリー)であり、創業者ジェームズ・ダイソン氏の息子のジェイク・ダイソン氏に、なぜ同社が新分野を開拓できるのかを尋ねた。
「エアラップ スタイラー」とコードレスクリーナー「サイクロン V10」のデジタルモーターは違うものですか?
ジェイク・ダイソン氏(以下、ジェイク) どちらもデジタルモーターですが、エアラップ スタイラー用とコードレスクリーナー用では特性が異なります。掃除機用は吸い込む空気量が多いという特性があり、エアラップ スタイラー用のデジタルモーター「V9」は、より高圧な気流を生み出します。V9は当社のヘアドライヤー「スーパーソニック」にも使っています。
なぜヘアケア市場を狙ったのですか?
ジェイク 小型軽量化を実現し、パワーやエネルギー効率を高めることに成功した自社開発のデジタルモーターの存在が大きいですね。このデジタルモーターがあるからこそ踏み出せたといえます。小さくて軽いデジタルモーターで、より速く髪を乾かせるため、多くの人々の髪の健康に貢献できると考えました。
さらに空気の流れに対するナレッジがあったことも当社の強みでした。空気の流れについては熟知しており、高圧の風が髪を乾かすことに使えるのではないかというアイデアからスーパーソニックが生まれました。エアラップ スタイラーは、ラボでエンジニアがスーパーソニックを使っていろいろ試していた時にシリンダーの周囲に髪の毛がくっつくことを発見し、そこからアタッチメントやエアフロー、毛髪の研究を始めました。エンジニアリング、サイエンス、そして創造性の高さなどを融合することで、新たなヘアケア家電が誕生しました。
世界中の毛髪の特徴をつかむ
毛髪の研究はどのように行いましたか? 日本でも実施しましたか?
ジェイク 毛髪の研究は、日本やアジア各国を含む世界中で実施しました。その結果、日本人の毛髪は水素結合の密集度が高いという特徴をつかんだのです。一度スタイリングすると、しっかり維持できる性質です。日本人専用というわけではありませんが、日本の方々には40mmのカーラーを使ってもらうといいと思います。
エアラップ スタイラーの色は遊び心があるといわれる人気のカラーにしました。すべてのダイソン製品の色は機能を表します。この色をもってテクノロジーを表現しています。
ジェイクさんはもともと照明デザイナーですが、なぜヘアケア家電を開発できたのですか?
ジェイク 10年ほど前に照明メーカーを設立し、LED照明を開発しました。15年にダイソン傘下に入り、私自身も移籍しています。エアラップ スタイラーの開発には約230人のエンジニアと科学者が関わっており、私のデザインの専門性を生かして、デザインプロセスを一緒につくっていく立場に就いています。
ダイソンには、掃除機や扇風機、ハンドドライヤー、照明といったさまざまなカテゴリーのプロダクトがありますが、それらすべての意思決定を、父であるジェームズ・ダイソンと私で行っています。
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