2018年3月に創業20周年を迎えたサイバーエージェントは、社員の約1割、600人以上がクリエイター。16年からはミッションステートメントに「クリエイティブで勝負する。」を掲げる。そんな同社の経営を、クリエイターの視点から支えているのが、同社執行役員クリエイティブ統括室室長の佐藤洋介氏だ。

(写真/稲垣純也)
(写真/稲垣純也)
佐藤洋介(さとう・ようすけ)氏
サイバーエージェント 執行役員 クリエイティブ統括室 室長
大学院卒業後、大手印刷会社のWeb制作部門に入社。2012年、サイバーエージェントに中途入社。数々のスマートフォンサービスの立ち上げを経験した後、クリエイティブ統括室を設立。現在はクリエイティブの執行役員として各サービスのUIデザインを監修。

 佐藤氏が執行役員に抜てきされたのは2016年。15年には、メディアやゲームなどのクオリティーを管理する「デザイン戦略室」の立ち上げに関わった。「当初の仕事はメディアが中心だったが、次第にロゴやCIの変更など、会社全体のクリエイティブに関わる機会が増えてきた」(佐藤氏)。

 16年には、サイバーエージェントのロゴやCIなどが変更され、クリエイティブにこだわったインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマティーヴィー)」が本開局したのもこの年だ。

デザイナーは経営のアレンジャー

 佐藤氏は「デザイナーは、経営の優秀なアレンジャーだ」と話す。

 企業は常に市場の変化にアジャストする必要があるが、そのとき、デザイナーの視点や能力が大いに役立つというのだ。デザイナーは、ある目的を達成するための手法を1つではなく、さまざまな角度から考えることができるからだと佐藤氏は言う。

 「例えば、赤いリンゴを描く場合、たいていの人は赤い鉛筆を使いたがる。しかし、デザイナーにしてみれば、黒い鉛筆でもリンゴらしく描く方法は何通りもある。陰影を付ける、対比としてバナナを描く、断面を見せるなど、赤を使わなくてもリンゴらしさを表現する方法を幾通りも考えられるのがデザイナーだ」

経営者とデザイナーの距離

 そのデザイナーと経営者との距離が近い点が、サイバーエージェントの強みの1つだという。例えば、藤田晋社長と佐藤氏は月に1回「サトウの日」を設けていて、現状の擦り合わせを行っている。サトウの日の直前には、佐藤氏が直接、現場の社員から進行中のプロジェクトの状況や困っていることのアラートを吸い上げ、藤田社長に伝える。デザイナーが直接、藤田社長に判断を仰ぐことも少なくない。「最終決定者との距離が近い、ということが重要。意思決定を最短で行えるから」(佐藤氏)。

 そんなデザイナーの役割は今後、ますます多角化してくるだろう、と佐藤氏は言う。「アレンジャーという本質的なポジションは変わらないが、むしろクリエイティブの力でゲームチェンジを果たす機会が増え、デザイナーが主役になってくるのではないか」と見る。

 そんな時代に、経営者とクリエイターの間のコミュニケーションは重要だ。

 「例えば、世の中のデザイントレンドがフラットデザインに移行しつつあった頃、自社のサービスにもそのデザインを取り入れようと考えた。しかし、今までの派手なデザインとはあまりにも印象が違ったため、藤田に説明するのに苦労した。機能性や操作感などトータルのメリットを説明し、場合によっては実際にリデザインしたものを見せ、そこで理解を得られたことが、自社にとって1つの転機になったと思う」(佐藤氏)。

 今後、デザイナーにはこのコミュニケーション能力がこれまで以上に求められてくるだろう。サイバーエージェントでは小集団による開発を基本とし、デザイナーのコミュニケーション能力を伸ばしている。チームの中にデザイナーは1~2人。他部門の人間に対して説明したり、重要な意思決定をしたりする場面も多い。その過程で自然に能力が磨かれていくという。

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佐藤さんの視点
1:デザイナーは「経営のアレンジャー」。企業が時代の変化に適応するうえで、その視点や能力が欠かせない。

2:クリエイティブの力でゲームチェンジを果たす機会が増える。そのとき、デザイナーが主役になってくる。

3:今後、デザイナーにはコミュニケーションの力がますます求められる。数多くの意思決定に参画させるべき。