官民連携で「デジタル教科書」をつくる。そんな目標を掲げて、総務省が教育分野におけるIT活用の規格整備を始めたのが2010年ごろ。ソフトバンク会長兼社長の孫正義氏も呼びかけ人の一人だった。それから8年。孫氏の“薫陶”を受け、ITやAI(人工知能)を使った学習を普及させようと民間側から挑み続けている人物がいる。中高生向けに学習コンテンツなどを提供するClassi副社長の加藤理啓氏だ。

 Classiは2014年に設立されたベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社だ。授業や宿題で使うデジタル教材を、先生と生徒に向け、スマートフォンやタブレット端末などを通じて15年から配信している。生徒用アプリはAIを使い、英語や数学などの動画やドリル教材を一人ひとりの学力に合わせて提示する。加藤氏が力を入れているのが、複数の生徒が一緒の課題を議論しながら解いていくアクティブラーニングだ。対話を通し、自分が主体的に課題解決に取り組む重要性を、ソフトバンクで新規プロジェクトをいくつも経験して分かったという。

Classiの加藤理啓氏。ソフトバンクで新規事業開発に携わる。2013年よりClassiの事業を立ち上げ同社の副社長に就任
Classiの加藤理啓氏。ソフトバンクで新規事業開発に携わる。2013年よりClassiの事業を立ち上げ同社の副社長に就任

Classiはどんなサービスを提供していますか。

 3つの柱がある。1つ目は、英数国理社の5教科の学習コンテンツを一人ひとりに合わせて提供すること。1本5分程度の動画が約2万5000本あり、ベネッセコーポレーションのテストの結果と連動して復習できる。先生が配信して生徒が解いたWebテストを自動採点して、間違えた箇所の類題をドリルとして配信したりする。ドリルは約7万問ある。

 2つ目はアクティブラーニングを助けるツールや仕組みの提供だ。3つ目は他社と連携した有料のアプリ配信。4月頭に始めたサービスで、英語の4技能やプログラミングなど6つの種類がある。

 学習記録が残せるので、先生は生徒の進捗状況を把握できるし、生徒は日々の学習履歴や活動を書き込み、見直せる。ビジネスモデルとしてはBtoBtoCで、実際にClassiのサービスを導入するのは国公立の学校なら学校やその地域の教育委員会、私立であれば学校側が直接行う。

Classiを始める前は、ソフトバンクで新規事業に関わっていたそうですね。

 海外パートナー企業とモバイル決済などの新規事業プロジェクトに多く関わった。教育分野の可能性も探っていた。米国では教育の現場を見て回ったこともある。

 11年ごろにオバマ米大統領が科学・技術・工学・数学に力を入れる「STEM教育」を打ち出した。僕にはそれが、新しいIT機器やソフトを子どもに触れさせる国策のように感じられた。先行事例はシリコンバレーからわき起こった。例えばiPadと教育ソフトをある学区に一括整備するといったことだ。

 ただ、日本向けの学習サービスを考えると、米国の事例をまねするのではなく、日本の良さを生かせる学びの形をつくりたかった。

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