長引くコロナ禍で女性のメイクはどんどん薄くなり、化粧品業界に大きな影響を与えている。しかし、売り上げを落とす商品がある一方で、マスク生活によって新たな売れ筋も誕生した。ロフトでは「ロフト ベストコスメ2020」と銘打ち、2020年のヒット商品や注目コスメなど、100アイテムを選出。そのラインアップからこれからの傾向を探る。
もはや日常のスタイルとなったマスク着用は、コスメ業界に大きな変化をもたらした。顔が隠れるために女性用化粧品全般の売れ行きが落ちているといわれる中、「マスクで唯一隠れない『目元』で勝負するため、アイメイク商品が売れている。また、マスクによる乾燥などの肌荒れ対策用の基礎化粧品や、男性需要拡大で男女問わず使えるコスメも人気。また、19年までは季節商品だったハンドクリームは手洗いや消毒の頻度が上がったため、1年中売れる商品となった」とロフト商品部 広報・渉外部部長の池田晶子氏はいう。
「年間TOP5」の1位、2位を独占したのは、化粧下地「ラ ロッシュ ポゼ UV イデア XL」。
「2位になった無色のトーンアップ下地は、色はなくても光の乱反射でハイライト効果がある。マスクをしているからファンデーションなどで色を付けたくない人、くすみや小じわ、毛穴などを飛ばしてくれるだけで十分という人は、上からフェイスパウダーを乗せるだけでOK」と日本ロレアル アクティブコスメティックス事業部 ラ ロッシュ ポゼ ジュニアトレーナー/ダーモアドバイザーの山元真菜美氏。
1位のローズは、20年4月に発売されたばかり。マスクの着用でチークレス、リップレスの人が増える中、顔の血色を良く見せたい人たちに支持された。肌の色ムラを整えるので、ファンデーションなしで使える点も受けている。
このシリーズは無色が発売された18年当初から人気だったが、「もともと商品は低刺激設計されており、マスクでメイクが薄くなったこと、肌荒れの人にとって刺激になりにくいことから、需要が高まった」(山元氏)
緊急事態宣言時にはマツエク(アイラッシュ)サロンも休業となったため、まつげ関連商品の需要が伸びた。
男性用育毛剤で知名度の高いスカルプDのまつげ美容液「スカルプDボーテ ピュアフリー アイラッシュセラム」は、自粛生活のためサロンに行けなくなった4~5月ごろから一気に需要が増えたという。「美容液を使うことでマツエクの持ちも良くなり、まつげが抜けにくくなるので、自粛期間が終わり、マツエクのサロンに行く人が復活しても使い続けてくれている」とアンファー Dクリニック事業部ブランド戦略部国内営業課エリアマネージャーの山﨑款大氏。
同じくサロンに通っていた人の需要を取り込んでスマッシュヒットしているのが、コージー本舗(東京・台東)の部分用つけまつげ「ドーリーウインク イージーラッシュ」だ。“10秒マツエク”のうたい文句のとおり、不器用な人でも手軽に装着できること、豊富なまつげデザイン、そして何より500円という手ごろな価格が受けた。「1ペア500円なので、10代の子が手に取りやすく、女性ワーカーも手軽にオフィス使いにできる。また、時間がない主婦の方も短時間で装着できることが支持され、世代を問わずに売れている」というのは、コージー本舗 東日本営業部営業第一課係長の森表大輔氏。デザインも全20種類あるため、購入する人は複数買いが基本だという。
また、ファッションアイコンである古川優香さんがプロデュースし、20年に誕生したばかりの「リカフロッシュ」は、アイシャドーやアイブロウ、プレストパウダー、チーク、ハイライトが1つのパレットに収まった「ラグトーマス・キット」が人気。
口紅が売れないマスク生活において、同ブランドではリップも売れているという。韓国コスメから火がついた唇の水分量によって発色する落ちにくいリップ「ティント」で、塗ってからティッシュでおさえればつかないため、マスクをしていてもOK。同ブランドのティントは「唇が乾燥しない」とTwitterなどのSNSで口コミが広まり、ブレイクした。
同じくSNSからヒットしたのが、YouTuberふくれなさんプロデュースによるCipiCipi「グリッター イルミネーションライナー」。4種類のグリッターとパールが入った涙袋メーカーだ。発色の良さが売りのブランドで、大きめのホロが入っているが肌なじみは良く、18~24歳のYouTubeをよく見る世代に売れているという。
手洗いや消毒のため、ハンドクリームは高くても本格派の商品に注目が集まる。ヤーマンのその名もズバリ「プロ・業務用ハンドクリーム」は、塗った直後でもベタベタせず、料理のときにも使えるため、プロの料理人も愛用するという商品。
手荒れに悩む美容師などのプロフェッショナルのために開発された「Hands A P.P.(ハンズエー プロフェッショナル プロテクション、※Aは上に○のあるオングストローム)」のハンドクリームは、第3の皮膚のようにバリア層を作り、外的刺激や乾燥から手肌を守る。「ハンドクリームの上からアルコール消毒しても溶け出すこともなく、口に入れても安全」(カエタステクノロジー 営業本部営業リーダーの深沢裕二氏)だという。
新しいライフスタイルの定着に合わせて、ヒットコスメも進化を遂げているのだ。