代官山 蔦屋書店で2019年2月20日まで開催されている「DRIVE by Jerry UKAI & TACOMA FUJI RECORDS」(以下、DRIVE展)。アートディレクターのジェリー鵜飼氏と架空のレコードレーベル「タコマフジレコード」のコラボフェアだ。開催初日には開店前から20~30人の行列ができ、商品も飛ぶように売れているという。

代官山 蔦屋書店2号館1階の階段下ギャラリースペースで開催されている「DRIVE by Jerry UKAI & TACOMA FUJI RECORDS」。2019年1月21日から2月20日まで
代官山 蔦屋書店2号館1階の階段下ギャラリースペースで開催されている「DRIVE by Jerry UKAI & TACOMA FUJI RECORDS」。2019年1月21日から2月20日まで
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 グラフィックデザイナーでイラストレーターのジェリー鵜飼氏は、18年夏に代官山蔦屋で初めてフェアを開催。この企画でいきなりギャラリースペースの企画展史上歴代最高の売り上げを記録した。一方、「タコマフジレコード」は架空のレコードレーベル会社として、架空の所属アーティストが着用するTシャツなどを販売する一風変わったブランド。音楽フェスやアウトドアイベントで着用率は高く、代官山蔦屋でもオープン2年目の12年から開催しているフェアが毎夏人気になるほど、根強いファンも多い。

 ジェリー鵜飼氏がタコマフジにイラスト提供をしていたことやタコマフジ代表の渡辺友郎氏と旧知の仲だったこと、今までダブルネームでのコラボはなかったことなどから、夏のフェア会期中にとんとん拍子にDRIVE展の開催が決まったという。もともと、二人は国産中古車の愛好家という共通点があり、今回のフェアが開催されているギャラリースペースは、クルマコーナーとアートコーナーを結ぶ場所にある。そこで今回のテーマは「DRIVE」となった。

 Tシャツやスウェット、セーター、キャップ帽などの定番商品の他、ドライブ中に使えるタンブラーや、キャンプの道具箱なども用意。同店外商企画室の伊藤辰徳氏によると、「クルマコーナーで扱う場合、どうしても本格志向のものやクラシックカー寄りのものが多く、アート寄りのこういうポップな商品展開は珍しい」という。

ドライブが楽しくなる「DRIVE LICENSE KIT」(税別9200円)。ジェリー鵜飼氏とタコマフジ代表の渡辺友郎氏がドライブ用BGMを選曲したオリジナルCDの他、ステッカーやキーホルダー、エアフレッシュナーなどをまとめたキット
ドライブが楽しくなる「DRIVE LICENSE KIT」(税別9200円)。ジェリー鵜飼氏とタコマフジ代表の渡辺友郎氏がドライブ用BGMを選曲したオリジナルCDの他、ステッカーやキーホルダー、エアフレッシュナーなどをまとめたキット
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フェア開催2、3日でほぼ全商品の店頭在庫が底をつき、急きょ投入されたスウェット(税別1万5000円)。その後も入荷しては完売を繰り返す状況が続いている
フェア開催2、3日でほぼ全商品の店頭在庫が底をつき、急きょ投入されたスウェット(税別1万5000円)。その後も入荷しては完売を繰り返す状況が続いている
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 人気の理由は「来店客との親和性やアーティスト2人に既存ファンがいることに加え、SNSの影響も大きい」と言うのは同店コンシェルジュの江川賀奈予氏。「最近のフェアの傾向として、SNSを上手に活用する作家さんが売れる傾向がある。今回のジェリー鵜飼さんは作っている過程も発信し、開催前から盛り上げている。会期中も定期的に発信をしてくれている」。

 ジェリー氏のSNSをのぞいてみると、キットの封詰め作業の模様をアップしたり、フェア会場のフォトスポットで撮った写真をアップしたり、欠品になっていたキャップ帽を補充したときに着画と一緒に発信したりという具合だ。

会場に設置されたフォトスポット。もちろんここでもジェリー鵜飼氏自ら撮影し、SNSで発信している
会場に設置されたフォトスポット。もちろんここでもジェリー鵜飼氏自ら撮影し、SNSで発信している
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『デザイン』をテーマにした古書フェアも開催

 この企画展の他にもう一つ、人気フェアの第2弾が現在開催されている。テーマに合わせた古書を集めた「DAIKANYAMA VINTAGE MAGAZINE FAIR」だ。

 「ファッション」がテーマだった第1弾に続き、第2弾となる今回は「デザイン」にフィーチャー。DTP(デスクトップパブリッシング)が出現する前の1985年以前に活躍した粟津潔、亀倉雄策、田中一光、永井一正、横尾忠則ら5人にフォーカスを当てると共に、85年以前に創刊したデザイン雑誌を集めている。

「DAIKANYAMA VINTAGE MAGAZINE FAIR Vol.2 Design ジャパンデザイナーとデザイン雑誌」(19年2月1日から2月28日まで。2号館1階建築・デザインフロア)。通常、イベントのPOP等はほとんど社内で制作しているが、今回のビジュアルは若手注目デザイナーの小林一毅氏に依頼するという力の入れようだ
「DAIKANYAMA VINTAGE MAGAZINE FAIR Vol.2 Design ジャパンデザイナーとデザイン雑誌」(19年2月1日から2月28日まで。2号館1階建築・デザインフロア)。通常、イベントのPOP等はほとんど社内で制作しているが、今回のビジュアルは若手注目デザイナーの小林一毅氏に依頼するという力の入れようだ
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 「若手の熱意によって実施した第1弾が予想より好調で、今回の開催につながった」と伊藤氏は言う。

 「古書は状態の良しあし、箱や帯の有無などで価格が大きく変わる。場数を踏まないと失敗も多い。目利き力をつけるためにも、自分たちで古書店などに買い付けに行くことが大事」(伊藤氏)と、今回は古書流通網を活用するよりも、自分たちの足で古書店をめぐり買い付けをするスタイルを採用している。

日本のグラフィックデザイナーの巨匠5人の関連古書と、「グラフィックデザイン」「月刊デザイン」「たて組ヨコ組」「アイデア」などのヴィンテージ雑誌がずらり。補充もスタッフ自ら古書店を回って買い付ける
日本のグラフィックデザイナーの巨匠5人の関連古書と、「グラフィックデザイン」「月刊デザイン」「たて組ヨコ組」「アイデア」などのヴィンテージ雑誌がずらり。補充もスタッフ自ら古書店を回って買い付ける
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 第2弾として「アート」を選んだ理由は、顧客の声がきっかけだという。「場所柄、デザイン業界のお客様が多く、『行き詰まったら蔦屋にいってアイデアを探す』というお声をいただいている。また、美容師の方がコンテスト前に来店して70年代の雑誌を参考にしているという話を聞き、そういった需要があるのであればと『デザイン』をテーマにした」(伊藤氏)。

 第2弾は前回よりも取り扱う雑誌や書籍の年代も古くなり、量も増えた。次に開催する際は規模を拡大することも考えているという。