アダストリアが手掛ける女性向けファッションブランド「ヘザー」が、縦型動画フォーマットを採用した短尺連続ドラマをSNS上で展開したところ、公開4カ月の累計再生回数が120万回を突破する人気となった。動画の視聴が増えただけでなく、ブランドのファンが広がり、売り上げ増にもつながった。
若者に広がるスマートフォン中心の生活習慣を背景に、従来の横型から縦型動画へと、“視聴スタイル革命”の波が押し寄せている。2018年8月にはInstagramが最長60分の長尺縦型動画を投稿できる「IGTV」をローンチ。今後、ウェブ動画の主流が縦型に切り替わる可能性も出てきた。
既に成功例もある。IGTVなどで配信された、アダストリアが手掛ける若年層向けレディスブランド「ヘザー」のドラマシリーズ「デートまで」が、公開4カ月で120万回再生を突破。3~6分の短いSNSドラマシリーズだが人気を博し、ブランドのファンが拡大。売り上げ増につながった。
「デートまで」では、スマホでの視聴に特化し、従来の横型動画とは一線を画す表現手法を取り入れた。内容が会話劇になっているのが特徴で、「縦型動画は、画角が狭く映像で語る情報量が少ないため、会話の面白さが重要になる」と、制作を担当したluteの高橋真氏は明かす。視聴シーンの多くを占める移動中でも見られるように字幕を採用し、広告に隠れないよう配置も工夫した。
ブランドの売りである服への関心が自然と高まるよう、“逆算”されたストーリーも秀逸だった。近年、企業がSNSドラマをブランディングの一環として配信するケースも増えてきたが、若年層は広告色の強いコンテンツを嫌う傾向がある。「デート中ではなく、デート前のエピソードを描いた。服を選ぶシーンへと違和感なくつながり、新しい服を着たいという購買意欲を呼び起こした」と、高橋氏は成功の要因を語る。
広告効果も劇的。Twitter上で話題が拡散し、公開1週間で公式Instagramのフォロワー増加数が従来の4倍にまで上昇。「今回の動画は特に商品の販促を狙ったものではなかったが、新たなフォロワーがオウンドメディアに流入し、商品を購入する好循環が起こった」(ヘザー営業部の坂田文子氏)という。
背景には、90年代後半に生まれた“ジェネレーションZ”と呼ばれる世代に特徴的な購買スタイルがある。SNSを通じて情報を“深掘り”し、商品を購入する。特にInstagramを愛用するユーザーは、愛着あるブランドの商品情報や周辺情報までもしっかり取得するため、商品の直接的な宣伝ではない縦型SNSドラマも、有効な広告手法になる。
新世代“ジェネレーションZ”
「ググる」はもはや死語に