ディープラーニング(深層学習)研究では国内トップレベルの東京大学・松尾研究室のメンバーが開催する最新論文の輪読会から、話題の論文を紹介する本連載。今回は、「服の着せ替え」を実現するAI(人工知能)に関する論文を取り上げる。
オンラインで服を買うという行為が当たり前になりつつある。カナダ ショッピファイのリポートによると、世界のファッションEC市場は年々大きくなっており、2018年には約50兆円の規模にまで成長した(i)。中国アリババ集団やドイツのザランドなど、ファッションECのプラットフォーマーはさらなる成長を目指し、ユーザーの利便性や他社との差別化を追求すべく研究開発(R&D)への投資を増やしている。
ファッションEC企業が深層学習を活用したシステムの例として、「画像による商品検索」(インド フリップカート)や「適切なサイズ推薦」(英エイソス)、「検索クエリーの意味的理解」(英ファーフェッチ)、「コーディネートの評価」(アリババ集団、ZOZO)、「顧客の購買行動予測」(ザランド)などがある。これらのAI導入の取り組みにより、ECサイトの利便性は日に日に高まっている。
また、データマイニングやコンピュータービジョンの著名な国際会議でも、ファッションに関するワークショップが開催されるのはもはや定番となっている。例えば、「Conference on Knowledge Discovery and Data Mining(KDD)」というデータマイニングの国際会議では、「AI for Fashion」というワークショップが16年より毎年開催されている。19年には推薦や画像検索、需要予測などを含む27のトピックが、ファッション領域におけるAI活用のワークショップの対象として挙げられている(ii)。
これらのことから、大学や企業がファッションに関するデータの活用に、研究課題やビジネスの可能性を見いだしていることが理解できるだろう。
服の着せ替えを瞬時に実現
さて今回は、筆者が特に面白いと考える「服の仮想試着」のタスクに関する論文を紹介したい(iii)。
実際の店舗で服を購入する場合、試着をしてサイズ感や似合っているかを確認することが多い。一方オンラインで購入する場合は試着できないため、モデルの着用例や商品のメタデータから想像するしかない。仮に試着ができたとしても、服の着脱には労力がかかるため、事前に試着する候補を絞る必要がある。
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