ソフトバンクグループは2020年10月29日、毎年恒例のイベント「SoftBank World」をオンライン上で開催した。会長兼社長の孫正義氏は「クラウド側とエッジ(端末側)側のAI(人工知能)が連携してインテリジェンスを高める時代」と話し、今後のAIによる進化を改めて強調した。
半導体設計を手掛ける英アームを米半導体大手のエヌビディアに売却するとともに、エヌビディアの大株主となる予定のソフトバンクグループ。会長兼社長の孫正義氏の狙いは、力を入れるAI技術の拡大にある。今回が初のオンライン開催となる「SoftBank World 2020」では孫氏とエヌビディアCEO(最高経営責任者)のジェンスン・ファン氏が対談し、AI技術の展望を語った。
AIで転換期を迎えたコンピューター技術
ソフトバンクグループは20年9月14日、同社の子会社で半導体設計を手掛けるアームを、GPU(画像処理半導体)やAI技術などで注目される米国の半導体大手、エヌビディアに売却することを発表し、業界に大きな驚きをもたらした。
16年にアームを買収した際、自らコンピューターのチップセット設計に携われることに喜びの声を上げるなど、アームは孫氏の思い入れが強い企業だった。なぜそれだけ思い入れのあったアームをエヌビディアに売却しつつ、一方でエヌビディアの大株主になるのか。
孫氏とジェンスン氏はかねて親しい関係にあり、両者がこれまで多く話し合ってきたのがAI技術であったという。その理由についてジェンスン氏は、AI技術が「歴史上初めて、コンピューター自身がソフトウエアを書けるようになった」画期的な技術であるためだと話している。
非常にパワフルなコンピューターが登場し、さらにAI技術の活用によって、人間がプログラムを書かなくてもコンピューターがソフトウエアを生成してくれるようになり「膨大な時間を節約でき、人間の創造性を大いに高めてくれる」と孫氏は説明。コンピューターは人間の脳の限界をはるかに超える情報を蓄積し、それを用いてAI技術で学習できることから、「人間にはまねできない規模の問題を解決できる」とジェンスン氏もその優位性について触れている。
そしてエヌビディアは「CUDA」というGPU向けのコンピューティング環境を提供しており、既に200万人以上の開発者を集めている。CUDAは従来のCPUを主体としたコンピューティングから構造を大きく変える存在であるとし、孫氏は「コンセプトの大転換に気づくべきだ」と話す。
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