2020年春、いよいよ国内で次世代のモバイル通信規格「5G」の商用サービスが始まる。サービスが先行している海外では、既に5G対応スマートフォンの販売が本格化している。販売の中心はハイエンドモデルだが、今後の普及に向けては低価格化と5Gの高性能を生かす機能拡充が求められる。
5Gスマートフォンに特に力を入れているのが、韓国のサムスン電子である。韓国と米国市場でフラッグシップモデルの「Galaxy S10 5G」を投入。これを皮切りとして、19年に5Gスマホ4機種を打ち出している。
また中国のファーウェイ(華為技術)も、米国からの制裁の影響を強く受けながらも5G対応機種投入を積極化。中国市場では2019年8月に、「HUAWEI Mate 20 X(5G)」を投入している。
これらの機種は、いずれも環境が良ければ通常時でも毎秒1ギガビットを超える通信速度を実現するなど、4Gとは桁違いの性能を誇る。ハイエンドモデルで、かつ5Gでの消費電力増加を意識していることもあってか、バッテリー容量は4000mAhを超える大容量で、本体サイズも大きめのものが多いようだ。
出遅れるアップルの理由は
他にもオッポ、シャオミなどの中国メーカーや韓国LGエレクトロニクスなどが5G対応スマホを投入している。一方で、出遅れが目立っているのが米アップルである。その理由は、これまでアップルに対しモバイル通信に必要なモデムチップを供給していた米インテルが、5Gモデムチップの開発で大きく遅れたためだ。
そこでアップルは、ライセンス料を巡り長きにわたって訴訟を繰り広げてきた米クアルコムと和解。同社からモデムチップ供給を受けて5G対応を進めることで巻き返しを図る。同時に、インテルのモデム事業の大半を買収し、独自の5G対応モデムチップ開発も進めようとしている。
5Gスマホの障壁は価格
メーカー側の積極的な対応が進む中、5Gスマホ普及を進める上で障壁となるのが価格だ。現在、5G対応のチップセットはハイエンド向けに限定され、5G対応機種も必然的にハイエンドモデルにならざるを得ないことから、その価格は日本円で10万円前後、安いものでも7万円以上という状況だ。
そうしたことからより低価格の5G対応スマホを提供するため、ミドルクラス向けチップセットの5G対応が求められている。それに応える形で、クアルコムがミドルクラス向けチップセットの5G対応を進めている。
日本では5Gの商用サービスが始まっていないことから、日本市場が主戦場となる日本のメーカーはまだ5G対応機種を投入していない。だがソニーモバイルコミュニケーションズやシャープは既に5G対応の試験端末を披露し、国内の携帯電話大手3社のプレサービスにも両社の試験端末が用いられている。
そうしたことから日本での商用サービスに合わせる形で、国内メーカー製の5G対応スマホがいくつか登場する可能性は高いだろう。
また5Gの利用が本格化する今後を見据えると、現在のスマホの形ではディスプレーが狭く、利用できるコンテンツの幅も限られるなど、5Gの性能を十分に生かせないことが大きな課題となってくる。
サムスン電子の「Galaxy Fold」に代表される、1枚のディスプレーを折り曲げられる折り畳み型スマホのように、将来的にはスマホの形状にも新たな進化が求められることになりそうだ。