※「5G&人工知能ビジネス2020」(2019年12月17日発行)の記事を再構成

仮想空間に没入することを楽しむVR、現実の映像とCGを重ねるARやMR。これらを総称する「xR」は、高速大容量の5Gを生かす用途として注目される。コントローラーを使わず素手で操作できるようにするなど技術も進化している。

今後は現実世界とバーチャル世界を融合する「MR」が広がると見られている
今後は現実世界とバーチャル世界を融合する「MR」が広がると見られている

 高速大容量の5Gを生かすサービスとして、大手の通信事業者がこぞって取り組むのが、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)だ。

 HMD(ヘッドマウントディスプレー)で多様な視点からCGで作られた仮想世界を楽しめるのがVR。透過型のメガネ型デバイスで風景とCGを重ねることで現実を拡張するのがARとなる。さらにMR(複合現実)と呼ばれる技術がある。CGと現実の融合で、業務用途など応用範囲を拡大するというものだ。

 ARとMRの違いは分かりにくいかもしれない。MRは、単にCGを表示するだけでなく、CGと現実をより密接に融合させ、互いに影響を持たせるという点が異なる。例えば、家具の色や模様をCGで変えつつ、消費者の使い方の変化を検証するといった使い方が考えられる。

 これらVR、AR、MRは、総称して「xR」と呼ばれている。

「xR」の分類は主に3種類
「xR」の分類は主に3種類
デジタルのCGの世界に没入するVR、現実世界に情報を重ね合わせるAR、両者を密接に融合させたものがMRとなる。実は、このほかにもCGの世界内に現実の情報を重ねる「AV」(Augmented Virtuality)という概念もある(写真提供/MR:米マイクロソフト、ARとVR:shutterstock)

トレンドはセンサー一体型

 VRは2016年に「元年」を迎えたと言われている。フェイスブック傘下の米オキュラス「Oculus Rift」、ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation VR」、台湾HTCが「HTC VIVE」と注目製品が相次いで登場したからだ。

 それから3年。19年時点のVRトレンドは「Oculus Quest」に代表されるセンサー内蔵の一体型だ。従来はユーザーあるいは手に持つコントローラーの位置を正確に把握するために、外部センサーを使う製品が主流だった。一体型の場合は、ゴーグルが備えるカメラで周囲の環境をスキャンし、自動的に空間マップを作成する。外部センサーを設置する手間がないので、気軽に使える。

 2020年にはコントローラーを使わなくても、ゴーグルの前にある手の動きをカメラで検知できるようになり、物をつかむといった操作ができるようになる見通しだ。

米オキュラスの「Oculus Quest」
米オキュラスの「Oculus Quest」
センサー一体型のHMD「Oculus Quest」。2020年にはコントローラーなしで3D空間内の物体を操作できる「ハンドトラッキング」技術に対応する(写真左はオキュラスのYouTube動画より)。従来はこうした素手の操作を実現するには「Leap Motion」のような外部センサーを取り付ける必要があった

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