記者が対面で人に会い、巧みに話を引き出す。聞いた内容を再構成し、一定の文章量の中に収める。そんな取材から執筆までを自動化するAI(人工知能)を用いたシステムがリクルート系の情報サイトで使われ始めた。こうしたAIの活用が広がれば、Webなどコンテンツ制作の仕事は大きく変化しそうだ。
AIが作った記事を掲載しているのは、リクルートホールディングスのグループ会社が運営する大学や専門学校の進学情報サイト「スタディサプリ進路」。在校生が大学の魅力や特徴を紹介するコーナーで、従来通りに人が作成した記事と並んで、AIが作成した記事約100本を2019年3月から公開している。
チャットボットを通して在校生から必要な項目を聞き取ったうえで、自動的に原稿を作成する。Web制作やマーケティングを手掛けるリクルートコミュニケーションズ(東京・中央)が開発した。この取材システムを同社では「InCo(インコ)」と呼んでいる。
「今の学校の高校生に自慢できるポイントは何ですか」。取材を受ける学生が、スマートフォンやパソコンを通してチャットボットの画面にアクセスすると、そんな質問が投げかけられる。まずは「今の学生生活で、一番力を入れていることを選んでください。『学業・研究・実習』『語学・留学』『資格取得・就職』……」とボタンを押して選び、その後は文字で回答を入力していく。
曖昧な答えにはつっこみ
設問は基本的に26問。「今一番力を入れていること」に学業・研究・実習と答えた場合は、勉強している内容について詳しく聞くなど、多数の分岐パターンを用意している。自然文の回答内容が曖昧だったときには「もう少し詳しく」などと、具体的な内容を聞く質問が増える。
曖昧さはキーワードを抽出することで判断している。例えば「いろいろがんばってます」「アットホームな雰囲気です」という回答には、具体的な記述がないことが多い。そうした傾向から「いろいろ」「アットホーム」といったキーワードをあらかじめ登録しておき、「アットホームとは、どういうことでしょうか」といった質問を追加する。このため設問数が30ほどに増えることもある。
チャットボットとの対話を通して得られるコメントは、1人につき1200文字程度となる。ここから「学んでいること・学生生活」「夢・目標」「分野・学校を選んだ理由」など4項目について、それぞれ約150文字の原稿にAIが仕上げる。
あらかじめ理想の原稿を想定
文章全体の構成を、AIがまっさらな状態からすべて組み立てているわけではない。実は、既にある程度の記事の骨組みは出来上がっており、そこに当てはまるコメントをチャットボットが聞き出している。過去5年にわたり、これまで掲載してきた原稿のパターンを分析し「サイトを訪問する高校生が知りたいと思う内容を含んだ理想の原稿を定義した」(リクルートコミュニケーションズ第2ソリューション局まなびソリューション推進1部プロセスデザイン1グループマネジャーの小林琴乃氏)という。
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