BI/ダッシュボードの違い

 BIとはBusiness Intelligenceの略で、もともと経営・会計・情報処理などの用語で、組織のデータを収集・蓄積・分析・報告するという意味。本記事で言うBIは新たな知見を獲得するためにデータ分析を主な目的とするビジュアライゼーションツールのことを指す。メインユーザーはデータサイエンティストなどの専門職であることが多い。

 対してダッシュボードは、データによる診断が主な用途であり、データを使って適切・迅速なアクションにつなげることを目的とするツールを指す。そのため、ビジネスユーザー全員が使いやすいように設計されているのが特徴だ。他にも、CRM(顧客関係管理)データやデジタルプロモーションデータ、市場・競合情報などのマーケティングに関わるデータを統合・可視化し、マーケターが利用することに特化したMI(Marketing Intelligence)ツールなどもある。

 自社がBI/ダッシュボードに求めているのは、データの分析による新たな知見の獲得なのか、適切なアクションを取るための診断なのか。一口にBI/ダッシュボードと言ってもできることが異なるため、自社の目的は何かをしっかりと定め、BIのみ、ダッシュボードのみ、もしくは併用するなど柔軟に検討することが大切だ。

BIとダッシュボードの違い
BIとダッシュボードの違い

 BI/ダッシュボード共に、「接続」「保存」「準備」「整理」「分析」「可視化」「共有」の7要素が必要だと言われており、プロダクトごとにそれぞれ特徴がある。ここでは例として、4つのプロダクトを紹介する。

Tableau
 BI界の老舗ツールとして、言わずと知れたTableau。かなり深い分析までできるためBI寄りのプロダクトだと言える。ユーザーコミュニティーも活発で、可視化のためのヒントを得やすいというメリットもある。ただ、分析やデータ操作に専門知識が必要な場合も多いため、一般的なビジネスユーザーというよりは、データサイエンティストやエンジニアなどに使いやすい仕様となっている。

looker
 lookerは日本ではまだ耳なじみの少ないツールだが、集計クエリをソフトウエア開発プラットフォーム「GitHub」で管理できたり、ダッシュボードの定義自体をコード化して共有できるなど、かなりエンジニアに使いやすい仕様となっている。BI要素・ダッシュボード要素のバランスが良く、コード管理ができる点が、同ツールの大きな特徴と言える。

Domo
 Domoは、経営者が経営判断に必要な数値をタイムリーに見たいというニーズからスタートしたため、深い分析というよりはダッシュボード寄りのプロダクトと言える。エンジニア向けにSQLも使える仕様ではあるものの、ビジネスユーザーが簡単に扱えるUIが特に充実しているのが特徴だ。

Google データポータル
 同ツールの特徴は、なんといっても基本無料で使えること。ビジュアライズ表現手段も多く、無料でここまでできるの!?と驚かされるほど、機能が充実している。ダッシュボードを他ユーザーへ共有するハードルも低い。

4ツールは主な対象ユーザー(横軸)、ツールの用途(縦軸)で性格が異なる
4ツールは主な対象ユーザー(横軸)、ツールの用途(縦軸)で性格が異なる

ツール選定のポイント

 ここでは4つのBI/ダッシュボードツールを紹介したが、MIツールである「Datorama」など、さまざまなツールが世に出ている。各ツールによって細かな仕様は異なるが、いざツールを選定する際は以下4つのポイントを押さえておく必要がある。

1.データ取り込み方法の多種多様さ
 データをツールに取り込むための方法は、多様であるに越したことはない。ツールによってはオンプレデータ(自社設備内で管理・運用を完結させているデータ)を手動でCSVやエクセルに出力する必要がある一方で、PCやサーバーにさえ出しておけば自動回収する機構を備えたものもある。また、取りたいデータのAPI接続口がなかった場合、ウェブスクレイピングやFTP経由など、さまざまな取得方法を考える必要がある。

2.ETL機能の有無と使い勝手
 ETL(Extract Transform Load=データ抽出や加工・入出力)機能とは、企業の基幹システムからのデータ抽出や加工、入出力をするための機能。広告やマーケティング系のデータはそのまま利用できないことも多いため、ETL機能の有無や柔軟性も意識しなければならない部分だ。

3.データガバナンスやセキュリティーへの配慮
 これは、大企業であればあるほど意識すべきポイント。全員へ全公開してよいのであれば問題ないが、部署や役職、グループによって見せられる/見せられないデータがあった場合に、データ資産の管理や公開の段階付けができるか、データセットの中で見せる/見せないの条件指定ができるかなど、柔軟に対応できる機能の有無はチェックしておきたい。

4.可視化されたものを共有する手段の多さ
 PCのみならず、モバイルでも可視化できるのか、チャットなどコミュニケーション機能はあるかなど、さまざまな連携方法が用意されていることも、定着化させるうえで意外と大事になってくる。通勤時間などにモバイルで確認することで、ダッシュボード慣れするための癖づけを行ったという例もある。

 どのようなツールを導入するにしても、大切なのは機能に引っ張られすぎず、自社でBI/ダッシュボードを導入する目的を見失わないことや、どのような指標を追うのかを明確化しておくことだろう。また、いざ導入してみたものの、定着化せず誰も見ないようでは宝の持ち腐れである。

 後編では、定着化のためのコツや、うまく活用するために身につけるべきスキルなどを紹介したい。