「この洋服のかわいい度は0.75、ガーリー度は0.63、デート度は0.87」。データ分析のINSIGHT LAB(東京・新宿)は、服を見たときに感じるさまざまなイメージを数値化するAI(人工知能)を、北海道大学と共同で開発した。AIの分析結果と顧客データを組み合わせた経営分析ツールとしての浸透を目指す。

開発したAIは、洋服の画像を読み込み、消費者がその服を見た時のイメージを、「かわいい」「ガーリー」「フェミニン」「デート」「ナチュラル」といった要素別に数値化する。同社ではこの数値を「情緒成分」と呼んでいる。例えば、花柄でフリル付きのワンピースを分析すると「かわいい」が0.98、「ガーリー」が0.84となるが、やや大人向けのニットのドレスは「かわいい」が0.77、「ガーリー」が0.45になるといった具合だ。
情緒成分は「かわいい」「ガーリー」などの他、「夏らしい」「着回ししやすい」「パーティー」「インスタに投稿したい」など多岐にわたり、約150種類を用意している。それぞれの情緒成分について最低値が0、最高値が1となっており、小数で結果を示す。
50人の専門学校生がデータ作成
AI開発のきっかけは、BIツール事業の顧客だった大手アパレルメーカーの担当者に、ファッション業界を変える新しいデータサイエンスのツールがないかと相談を受けたこと。ロイヤルティーの高い顧客が好む共通キーワードが「かわいい」であることは見えていた。ただ「かわいい」の定義は人によって異なり、単純に測定することは難しい。
そこでAIを使うことで、「かわいいを構造化し、数値化する」(INSIGHT LAB コンサルティング本部長シニアコンサルタントの横尾聡氏)ことを目指すプロジェクトを2017年4月から開始した。技術面では、以前からAI関連の相談を持ち掛けていた北海道大学大学院情報科学研究科の川村秀憲教授の協力を仰ぎ、産学連携で開発を進めた。
AIを構築するには学習のための教師データが必要となる。データ作りには、服飾専門学校の学生約50人が参加した。専用のスマートフォン用アプリ上で、表示された服の情緒成分を評価できる仕組みを作り、50人が手分けをして3万5000アイテムを評価した。服飾の知識を持ち、最新ファッションへの高い感度を持つ若者が評価をすることでデータのぶれを抑えつつ、ディープラーニングの手法で3万5000のデータを学習させた。
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