ウオーターサーバー事業の富士山の銘水(富士吉田市)は、IoT技術を使った自動発注システムを開発し、2018年12月に提供を始めた。ボトルを定期配送するモデルと比べて、顧客の消費状況に合わせた都度配送を実現できる。10カ月の開発期間にはさまざまな障壁があった。
「ウオーターサーバーのビジネスは、数年前まではほぼ100%がサーバーをレンタルして水のボトルを定期配送するモデルだった。そうした中で、ウオーターサーバーを買い取ってもらい、水のボトルをその都度購入する販売モデルにかじを切った。トータルでは販売モデルのほうが安価に水を使ってもらえる。現在では当社のビジネスの半分程度が販売モデルになってきた」
こう語るのは、ウオーターサーバービジネスを展開する富士山の銘水で開発部 部長を務める溝内竜士氏だ。IoTプラットフォームを提供するソラコム(東京・世田谷)が19年2月12日に開催したプライベートイベント「if-up 2019」で、ウオーターサーバービジネスにおけるIoTの活用方法について講演した。
買い忘れを防ぐ仕組みが必要
富士山の銘水は10年に設立され、「FRECIOUS(フレシャス)」ブランドでウオーターサーバー事業を展開している。ウオーターサーバーというと、定期的に届く重く大きなボトルを装着して湯水を出すためのレンタル機器という印象が強いが、富士山の銘水ではレンタルモデルだけでなく販売モデルにも力を入れてきている。ウオーターサーバーを水の付属品として提供するのではなく、機器として受け入れられる機能やデザインを採用して販売し、ボトルを必要に応じて注文してもらうビジネスモデルである。レンタルモデルから販売モデルへの転換は成功し、すでに約半数の顧客が販売モデルに移行している。しかし、販売モデルには課題があった。
「レンタルモデルでは定期的にボトルを届けるが、販売モデルでは顧客が注文しなければボトルは届かない。すると買いすぎや買い忘れが目立つようになってきた」と溝内氏。
数年前からIoTの文字を新聞などで見聞きするようになり、注文を自動化できるのだろうかという問題意識は持っていた。そうした中で、「18年2月に、アマゾンから自動発注サービス『Amazon Dash Replenishment』を利用しないかと声がかかった。ウオーターサーバーにセンサーを持たせて、商品注文用の小型端末である『Amazon Dash Button』を自動的に押すようなサービスだ。アマゾンから声がかかり、バックアップもあるとなったら、やるしかないと腹をくくった」
話には聞いていても、IoTを「いおと?」と思っていたぐらい通信やシステムには疎かったという溝内氏だが、同氏の率いる開発部は同社のシステム部や機器メーカー、ソラコムなどの手助けを得て、IoTウオーターサーバーを開発することにした。
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