中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は2020年5月20日、中国全土を対象に災害の早期警報を手掛ける成都高新減災研究所と提携した。AI(人工知能)やクラウドコンピューティングなどの技術を災害の早期警報に活用。災害の監視や予測、警報の発信などを事業化し、緊急事態時でも管理可能なスマートシティの建設を目指す。
世界最大規模の取り組みへ
成都高新減災研究所は2008年5月12日に発生した中国・四川大地震の後に設立された組織で、災害の早期警報技術の研究開発および応用開発を手掛けている。12年間の研究開発による早期警報の成果は世界をリードしており、有している知的財産権は完全に独自のものだ。その成果が評価され、中国の市や県の地震防災部門「市県応急部門」と連携し、世界最大規模の地震の早期警報ネットワークを構築している。その規模は中国で31の省・市・区で総面積220万平方キロメートルをカバーし、中国で地震が発生する区域の人口の90%(約6億6000万人)をカバーしている。
成都高新減災研究所は11年から9年連続で安定して地震の早期警報を提供している。56回の破壊性地震(中国では、マグニチュード2.5以下の地震を「小地震」、マグニチュード2.5~4.7の地震を「有感地震」、マグニチュード4.7以上の地震を「破壊性地震」と分類している)の早期警報に連続して成功している。また、同研究所は現在、地震による地滑りや土石流、山津波といった多くの種類の災害の早期警報技術チームと、新たな技術体系の構築を進めている。
成都高新減災研究所所長で地震予警四川省重点実験室主任を務める王暾(ワン・トゥン)博士によると、「今回の提携によりバイドゥのAIを使えるようになったことで、成都高新減災研究所の災害の監視や早期警報などの各状況において、より迅速かつより正確な状況判断や予測を実現することができる」と話し、バイドゥとの提携の重要性を強調している。
AIによる3つのメリット
今回の提携では、AIの活用により、3つのメリットが生じる。1つ目は、AIが人間に代わって大量のデータを分析し、データ処理の速度を大幅に速められること。2つ目は、早期警報の情報伝達において、AIがより正確な情報とより良いチャネルを選択して、効率的に情報を伝達できること。3つ目は、AIを活用することで災害の連鎖発生を予測しやすくなることだ。一般に自然災害は、地震が土砂災害を引き起こすように連鎖的に発生することが多く、この連鎖発生を予測できれば、それだけ地域住民の避難の時間を稼ぐことができる。
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