中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は2020年3月7日、新型コロナウイルスの影響で休止していた自動運転タクシー「Apollo Robotaxi(アポロロボタクシー)」の試験運営を再開した。同時に、新型コロナウイルス対策が可能な「耐ウイルスPRO」バージョンのアポロロボタクシーの試験運営も始めた。赤外線を使って乗客の体温を測定し、紫外線を照射して車内を殺菌するのが特徴だ。

「耐ウイルスPRO」バージョンの「Apollo Robotaxi(アポロ・ロボタクシー)」の試験運営開始を伝えるバイドゥのリリース
「耐ウイルスPRO」バージョンの「Apollo Robotaxi(アポロ・ロボタクシー)」の試験運営開始を伝えるバイドゥのリリース
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 「需要があれば、どこにでも行く!」──。これは、中国各界で実施されている「武漢への支援」を象徴するスローガンとされる言葉である。同時に、バイドゥの自動運転開発プロジェクト「Apollo(アポロ)」にとっても、新型コロナウイルス対策支援を象徴するスローガンでもある。さらに言えば、この言葉は、多くの中国国民が自動運転車に寄せる期待も示している。

赤外線で体温測定、紫外線で殺菌

 バイドゥは、そんなアポロロボタクシーの試験運営を再開するに当たって、人と人の接触による感染リスクを最小限に抑える工夫を凝らしている。まず、車の外側に赤外線による体温測定装置を取り付けた。車外で乗客の体温を測定し、体温に異常があれば音声で知らせる仕組みになっている。また、車内には救急車内で殺菌のために使用される紫外線ランプを設置した。出力は16W(ワット)ほど、紫外線の強さは約55 μw / c㎡(マイクロワット毎平方センチメートル)で、人体に対する影響はなく、30分で車内全体の消毒を完了できる。

赤の部分には赤外線による体温測定装置が、青の部分には紫外線による殺菌装置が取り付けられている(バイドゥのリリースより)
赤の部分には赤外線による体温測定装置が、青の部分には紫外線による殺菌装置が取り付けられている(バイドゥのリリースより)
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乗客が手を触れる場所は利用のたびに消毒

 さらにバイドゥは、人を介した安全対策も十分に実施する。同社は試験運営再開後、運転席に座る乗客の安全を確保するための専任スタッフにマスク着用を義務付け、体温測定や健康状況の記録を毎日行っている。また、車両のドアノブや、乗客席に取り付けられた専用タブレット、車内の手すり、座席など、乗客が接触する箇所については、乗客が利用するたびに消毒して、安全安心な乗車環境を整えている。

 自動運転の普及は、国家の経済や国民の生活に関わる改革であり、また新型コロナウイルスのような公衆衛生に脅威を与える重大で突発的な事件に対する、有力な対抗手段にもなる、とバイドゥは見ている。ウイルス対策が施されたアポロロボタクシーの今後の活躍が期待される。