2019年9月25日から27日にかけて、中国EC最大手のアリババ集団は、本社を置く浙江省杭州市で年次最大のテクノロジーカンファレンス「2019 杭州・雲栖大会」を開催した。今回のテーマは、「数・智(数はデジタル化、智はスマート化の意味)」とし、来場者は6万人を超え、200人余りの科学者が先端技術について講演した。
アリババ初のAIチップが登場
今回のカンファレンスで、テクノロジーのコラボレーションを世界規模で進めるアリババの研究機構「阿里巴巴達摩院(アリババ・ダモ・アカデミー)」の院長である張建鋒(ジャン・ジェンフォン)氏が、アリババ初のAI(人工知能)チップ「含光(ハングワン)800」を紹介した。
全世界で最強となるAIチップであると強調され、その実力も示された。コンピューティング能力を示す標準としてよく用いられる、畳み込みニューラルネットワーク「ResNet-50」の測定では、7万8563 IPS(毎秒7万8563枚の画像を処理)の推論処理性能を記録し、現在の業界最高レベルであるAIチップのおよそ4倍のパフォーマンスを記録したという。電力効率は500IPS/w(1ワット1秒で500枚の画像を処理)と世界トップ、しかも2位のAIチップの3.3倍に達した。
ハングワン800は、すでにアリババ内部のコア業務に応用されている。例えば、都市のスマート化を実現するシステム「城市大脳(シティー・ブレーン)」に用いられており、杭州市の主要地区内での交通映像のリアルタイム処理に用いられている。従来では画像処理半導体(GPU)が40個ほど必要だったが、ハングワン800はその処理を4個でカバーし、しかも遅延を0.3秒から0.15秒へと半分に短縮する。
ハングワン800は、アリババのクラウドサービス「阿里雲(アリクラウド)」を通じてAIのコンピューティング能力を提供する。ハングワン800を活用したAIクラウドサービスは同日正式に開始された。これまでのGPUと比べ、費用対効果はおよそ2倍になるという。
「百新」の概念を発表
アリババの会長兼CEO(最高経営責任者)である張勇(ダニエル・チャン)氏は基調講演で、「五新」から新しく「百新」という概念を提示した。「五新」は2016年に前任者の馬雲(ジャック・マー)氏によって提示されたもので、「新小売り」「新金融」「新エネルギー」「新技術」「新製造」の5つを指す。
新たな概念に対し、チャン氏は以下のようにコメントした。「デジタル経済時代に全面的に突入する時期において、我々は『五新』から『百新』へ、そして『万新』へと向かっていく。すなわち、各業界がデジタル化およびスマート化へと進んでいくということだ。現在、工場であれ学校であれ病院であれ、またその背後にある工業や農業、医療、教育など各業界のすべてがデジタル化へと向かい、さらにこうした業界・産業はデジタル化によりアップグレードする。商業におけるすべての要素ないし社会におけるすべての要素が、全面的にデジタル化およびスマート化に向かっている」。
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