キャッシュレス先進国として知られるスウェーデンでは、店舗だけでなく交通領域にもスマートフォンアプリによる決済が浸透中だ。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の裏側でも決済基盤として活用されている。2019年2月、半年ぶりに訪れたスウェーデンから前回に続きキャッシュレスの先端事例をリポートする。

ストックホルム市営交通のアプリでは、1つのQRコードでさまざまな公共交通機関を利⽤できる
ストックホルム市営交通のアプリでは、1つのQRコードでさまざまな公共交通機関を利⽤できる

 スウェーデンのキャッシュレス化の象徴ともいえるスマホアプリが「Swish」だ。18年9月時点で約650万人が利用し、利用者は人口の65%にまで浸透している。スウェーデン国立銀行と大手銀行6行が協力して開発された個人間送金のサービスだったが、現在は店舗やサービス利用料の支払いにも徐々に拡大している。

 Swishは、銀行口座と電話番号、国民番号がひも付けられている「BankID」と呼ばれるIDと連携しているのも特徴だ。Swishは支払時にシステム上の処理として、Bank IDによって銀行口座と連携して、銀行口座からの引き落としで支払いを確定させる。このような国が主導する決済認証基盤が確立していることが、スウェーデンでは新しいサービスや産業を生み出す原動力となっている。

飲⾷店などでも「Swish」で⽀払いが可能だ
飲⾷店などでも「Swish」で⽀払いが可能だ

 決済や銀行口座の認証といった機能は、高度なセキュリティーや大規模システムが必要であり、非常に「重い機能」だ。日本では「FinTech」というキーワードが取り沙汰されるようになり、この領域も近年議論されるようになりつつある。だが、銀行を含む決済基盤が統合され、オープン化されるにはまだまだ時間がかかりそうだ。そのため、各社は自前で決済システムを構築しているのが現状。当然、競合同士でも乗り入れられるオープンな仕組みは提供されていない。

 一方、スウェーデンでは国のお墨付きの決済基盤であり、事業者向けにオープン化されているため、サービス提供者は決済基盤を自前で開発することなくさまざまなサービスを開発できる。その上、銀行連合が主体となり、口座直結のため、法人はクレジットカードより手数料が安いというメリットもある。国で共通の決済基盤を持つスウェーデンの取り組みは、日本の今後を考える上でも参考になる点がある。

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