東南アジアにおけるデジタル産業で存在感を放つシンガポールは、店舗でのモバイル決済、無人注文を政府が強力に支援し進めている。2018年9月にはQRコード決済の統一規格を発表し中国勢を追う。チャンギ国際空港のフードコートを完全キャッシュレスにするなど、その打ち手には日本も学ぶべき点が多い。

シンガポールでも店頭に置いたキオスクによる注文、決済が広がっている
シンガポールでも店頭に置いたキオスクによる注文、決済が広がっている

 シンガポールは560万人の都市国家だが、米グーグルや米フェイスブックがアジア地域のヘッドクオーターを構え、東南アジアにおけるデジタル産業でも存在感を放っている。モバイル決済サービスにおいては、トヨタ自動車や本田技研工業、ソフトバンクなどがこぞって出資していることで注目を集めるグラブ(Grab)もシンガポールに本社を置く。

 グラブはマレーシア人のアンソニー・タン氏が12年に創業。当初はマレーシアのクアラルンプールで米ウーバー・テクノロジーズと同様のタクシー配車アプリのサービスを開始した。その後、バイクのライドシェアなども展開し、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシアと破竹の勢いで近隣各国に進出している。ライバルとして激烈に争っていたウーバーとは、融和するようなかたちで同社の東南アジア事業を買収し、代わりに出資を受け入れた。これで名実共に、一強体制となった。

 17年からは「GrabPay」というブランドで実店舗向けの決済サービスも開始し、すでに配車サービスの枠は大きく超えて、フードデリバリーや宅配サービスなどにも手を広げ、東南アジア全域における決済プラットフォームの様相を呈している。

シンガポールのキャッシュレス決済は「GrabPay」だけでなくさまざまなサービスが併存する
シンガポールのキャッシュレス決済は「GrabPay」だけでなくさまざまなサービスが併存する

政府もキャッシュレスに本腰

 シンガポールの飲食店などでは、確かにGrabPayのロゴステッカーを見かけるが、店頭モバイル決済において支配的なポジションを得ているわけではない。もともと政府が主導し、シンガポールの3大銀行のデビットカードとして始まった「NETS」は、17年9月にQRコードの統一規格を発表した。この規格を満たすと対応する複数のスマホアプリで決済が可能になり、18年末までには屋台などを含めて10万カ所で利用可能になるという。また、中国系の人口も多いシンガポールには「アリペイ」も進出しており、やはり店頭でその青いロゴステッカーを見かける。

3大銀行のデビットカードとして始まった「NETS」はQRコードの規格を統一し、普及を図る。大学でも導入されている(右写真)
3大銀行のデビットカードとして始まった「NETS」はQRコードの規格を統一し、普及を図る。大学でも導入されている(右写真)

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