データ可視化(ビジュアライゼーション)とは、数字や文字の羅列から、効果的にデータの中身を伝える手段である。可視化の効果は文字情報と比べて、読み手に対し大きなインパクトを与えられることだ。ただ、良いデータ可視化とはどういったものか知らない人も多いのではないだろうか。使ったことで逆効果を生んでは本末転倒だ。本連載の第1回はデータ可視化で押さえておくべき基本的な考え方を整理する。

効果的なビジュアル作成には覚えておくべき基本がある(c)Shutterstock
効果的なビジュアル作成には覚えておくべき基本がある(c)Shutterstock

 データ可視化とは、数字や文字の羅列から、効果的にデータの中身を伝える手段である。ビジュアライゼーションともいい、要素としては概念図やグラフなどを含む。これらをビジュアルという。

 可視化の効果は、多くの研究が立証している。ビジュアルは文字情報と比べて直感的に把握できるという長所がある。SNSでも、文字のみと比べて画像・動画付きの投稿は、いいねされたり、シェアされたりする場合が多いようだ。ビジュアルを活用することで、読み手に対し効果的にインパクトを与えられる。

 企業でもデジタルマーケティングなどを通して、効果検証を行っている。効果が明らかになるにつれビジュアル利用はトレンドになった。2016年6月号の米ハーバード・ビジネス・レビュー誌の記事「Visualizations That Really Work」は、データ可視化は管理職の必須スキルとなったと言い切っている。私は、しかし、自信をもって使いこなせる人は多くないとみる。なぜなら、良いデータ可視化とはどういったものかを知らないからだ。

 本稿では、データ可視化で押さえておくべき基本的な考え方を整理する。具体的なグラフ作成のベストプラクティスを以降の回で連載していく。数字に強くなくても、基本的なテクニックを知るだけでビジュアルを格段に分かりやすく作れるようになるだろう。可視化に必要なのは、センスではなく、知識と場数だ。

 今回は日本政府観光局(JNTO) がまとめている訪日外国人数を例に取って説明する。訪日外国人数を可視化するだけでも多様な表現が思いつくが、ここでは、「国・地域別の比較」「国・地域別の過去2年の比較」そして「目的に応じた表現」の3つについて、NG例とOK例を挙げ対比させていく。よく見比べてほしい。

とにかくシンプルに、見た目を追わない

 ビジネス用途に使うための「良い可視化」とは、映えるものではなく、誰にとっても分かりやすいもの。すなわちシンプルな表現である。

 表現の解釈や結果の読み取りに説明が必要なものや、奇をてらったものは、基本的に使わない。見た目ではなくデータの中身に集中し、誰でも一目で理解できるビジュアルを目指そう。

 訪日外国人数を国・地域別で見る目的でビジュアルを作った。

 NG例では、値の大きい国は分かるが、円の大きさの比較や順序の把握はできない。よってどのように読み取ればいいか迷う。

 OK例を2点挙げた。1つはシンプルで分かりやすい棒グラフ、もう1つは地図。近隣国からの旅行客が多いことを示したいなら地理情報を活用するのも手だ。

読み取りが容易なのはどれ?
読み取りが容易なのはどれ?
訪日外国人数を国・地域別で表現した。NG例はどのように読み取ればいいか迷う。OK例はシンプルで分かりやすい棒グラフ。近隣国からの旅行客が多いことを伝えたいなら地図もよい

 1つのビジュアルに多くの情報を詰め込み過ぎないようにしよう。人間は一度に多くを理解できない。伝えたいことが散漫になり、すべての要素で説得力が低下する。

 訪日外国人数の地域別、前年比の要素を使いたい場合を考える。左のNG例は、棒グラフで地域ごとの人数、折れ線グラフで全体の前年比を表している。しかし、棒グラフから各地域の増減数や割合の把握は難しいし、その棒グラフと重ねた折れ線グラフで前年比を見る必要もないだろう。OK例は1つに詰め込まず、意味合いごとに分けている。必要な要素のみ使うようにしたい。

伝えたい要素を1つに詰め込み過ぎていないか
伝えたい要素を1つに詰め込み過ぎていないか
訪日外国人数の地域別と割合、前年比のデータ。NG例は、棒グラフと折れ線グラフで全部の要素をまとめているため伝えたいことが散漫に。OK例は意味合いごとにグラフを分けたため、すっきりしている
有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>