@Yam_eye・2016年02月26日 三宅一生さんにお会いした。恐縮にも向こうから声をかけられた。いつも柔らかく、しかし力強いオーラのようなものを身にまとっている。あんな魅力的な人は、そういない。

三宅一生氏との出会いの場所に持ち込んだtagtypeキーボードの初期スケッチ
三宅一生氏との出会いの場所に持ち込んだtagtypeキーボードの初期スケッチ

 三宅一生氏の仕事をあらためて俯瞰(ふかん)すると、その広大さに胸を打たれる。実は私は駆け出しデザイナーの頃からISSEY MIYAKEの服をプレゼンなどの勝負服にしてきた。しかし当時のそれは、いわゆる「クリエイタースタイル」への憧れにすぎなかったように思う。私がもう少し深く、彼の仕事の神髄のようなものに触れたと感じたのは、1998年に発表されたA-POCとの出会いだった。

 服をデザインするということは、一般的にはパターンの設計でもある。服を展開図として設計し、どこをどのように縫うかを計画する技術がなければ服のデザインは成り立たない。この技術は長い衣服の歴史の中で培われたもので、一般的に服の製造には、デザイナーのスケッチから辻つまの合う立体造形に展開できる優れたパタンナーが欠かせない。しかしA-POCにおいては、生地の織りのパターンに初めから服の立体構造が組み込まれている。服は細い糸で地とつながっていて、そこを切り離すだけで袖を通すことができる。パターンも縫製も、初めから生地に文字通り織り込まれているのだ。

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