@Yam_eye・2011年10月01日 ホットケーキにかけるメープルシロップも、トンカツにかけるソースも、最初にぐるぐるかけてしまうと、時間が経ってしみ込んでしまった所がなんかもっさりした味になるので、食べる分だけいちいちかけるのは、私だけでしょうか。

(画像/山中 俊治)
調味料と素材の出会いが生む刹那的な価値
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 妙なこだわりかもしれないが、調味料は食べる分だけいちいちかけたい。この感覚は、私にとってはかなり広い範囲のもののようだ。ワサビもしょうゆに溶かさないほうが好みであるし、ボルシチに添えられたサワークリームも混ざってしまわないように気をつける。コーヒーに砂糖を入れる習慣はないが、苦めのエスプレッソに入れる場合もかき混ぜず、最後に少しだけ甘みを感じるのがうれしい。総じて強い塩みや甘み、香りなどが小粒に舌の上に置かれたときの鮮やかな味覚に魅せられ、素材とのコントラストを楽しみたいようだ。トンカツの場合は、衣のクリスピーさを損なわない意味もあるだろうが、いずれにしても時間的な変化に生じる揺らぎのようなものにこだわっていると思われる。

 私のこのような嗜好は、味覚にとどまるものではないらしい。紅葉なども少し緑が混じっているときのほうが、全体が単一色に染まる最盛期よりもなぜかワクワクする。葉桜も良い。

 振り返ってみれば仕事においても、異なる2つの価値観や分野などが出合い、混じり合うときに優れたものが生まれたという実感がある。研究者との出会い、ファッションデザイナーとの出会い、からくり人形師や義肢装具士との出会い。そうした交流はしばしば、斬新なアイデアを生み出した。特に出会った最初の瞬間にこそ、俗に「化学反応」などと呼ばれる思考の活性化があったように思う。

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