@Yam_eye・2010年11月29日 商品開発におけるユーザーテストを通じて学ぶことは多い。例えば、人は自分の不満の原因を正しく言い当てることはできないものなのだ、ということがよく分かる。

義足のテスト用プロトタイプ。重量バランスを検証するために様々な場所に重りを取り付けられる構造になっている
義足のテスト用プロトタイプ。重量バランスを検証するために様々な場所に重りを取り付けられる構造になっている

 「とても退屈だったよ」と、その若いデザイナーは言った。彼が、人間工学的設計で有名なスウェーデンのデザイン会社の出身だと聞いて、そこでの経験について質問したときのことである。実験と検証に基づいてデザインされたその会社の製品群はすでに世界的に定評があったのだが、彼は「データばかり取っていて、ちっともワクワクしなかった」と続けた。まだ30代だった私は、そういうものなのかと落胆したのを覚えている。

 実は、この反応は珍しいものではない。正直に言えば、私の中の芸術家の部分もしばしば、人間工学的なテストは退屈だと主張する。アーティストも人間を観察するが、それは不満を聞くためでも作品の効果を測定するためでもない。感動的なスタイルは自分の深層との対話の中からしか生まれないという経験は、私だけのものではないだろう。何度も人の意見を聞いてそのたびにちょこちょこ直すなど、芸術家として見れば、作品を濁らせる行為でしかない。

 しかし一方で、人の行動の研究者としての私は、近年のユーザビリティ・テストをとても面白がってもいる。実際、プロトタイプを人に使わせてみると、思わぬことが起きる。特に新しい技術を使った装置やシステムの場合、使ってみてもらうたびに「え、そこでつっかえるか」の連続になる。それを一つひとつ検証して、原因を確かめ、改良を重ねて解を発見する喜びは、科学者としてのものだと思う。

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