@Yam_eye・2013年02月27日 自分の直感を信じてその方向に進むことはデザインの基本だが、実験や調査で科学的に正しくないことが明らかになったときは、ばっさり捨てる。戦っても無駄。

2019年の山中研究室卒業生に贈った「美しいコネクター」シリーズの1枚
2019年の山中研究室卒業生に贈った「美しいコネクター」シリーズの1枚

 「うーん、この構造だと強度的に難しいですね」とか「冷却のための放熱面積が足りないです」「バッテリーの体積が……」とか、プロダクトデザイナーが技術的に難しい状況に直面することは珍しくない。どの辺りで折り合うかは悩みどころで、技術領域によっても製品によっても異なるので一概には言えない。

 しかし例えば材料力学に関すること(強度や剛性など)なら、シミュレーション結果と必要条件とのギャップが2、3割ほどであれば、なんとかデザイン修正でクリアできないかを私ならば検討する。逆に、目標値に対して5割以上の開きがあるようなら、あっさりとそのデザインをあきらめる。自分の中の科学者(エンジニア)が「新しいアイデアを考えるほうが早いよ」と告げるからだ。

 工業製品のデザイナーは、アーティストであると同時に科学者でなくてはならない。製品に関わる計量可能な物理量、例えば、サイズや重量、強度、熱や圧力、電圧や電流、あるいはエネルギー量などについて、常に計算に基づいて思考する必要がある。ロボット博士の古田貴之さんと初めて仕事をしたとき、彼は私が提案した簡単なスケッチから各部の重量を推定し、必要なトルクやエネルギー量をそらで計算して、その場で成立性を議論し始めた。なるほど、複雑なものを構想する科学者は、こういう思考をするのかと深く感銘を受けたことを覚えている。

 それからというもの、古田さんには遠く及ばないが、私もできるだけ計算してみるようにしている。各分野の基本的な科学法則(数値間の比例や累乗の関係など)を頭に入れておくとスペックの見積もりが早い。いわゆる公式を覚えておくというやつだが、案外実用性は高い。こうした見積もり能力は、金銭感覚などとも似ている。デザインの修正で乗り切れると予想する感覚も、「値切れる範囲」を直感しているということなのかもしれない。

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