@Yam_eye・2017年04月22日 理想のフリーランサーはゴルゴ13だと思う。完璧な仕事。最高の報酬。営業活動なし。値段交渉なし。稼いだ金は自己の鍛錬と仕事の遂行のために惜しみなく使う。
19年12月に放映されたNHKの「SWITCHインタビュー 達人達」という番組で、漫画家のさいとう・たかを氏と対談した。そのビデオを見ると、自分があまりにハイテンションなのがとても恥ずかしい。まあ、本当に憧れていたのだから仕方がない。
40年前、学生だった私が、勉学の目標を見失って「漫画」を描くことに逃げ込んだとき、「さいとう・たかを」はすでに巨匠だった。劇画という独特の画風を確立し、大人のための娯楽作品という分野を切り開き、その代表作である「ゴルゴ13」(発行:リイド社SPコミックス)は、小学館の「ビッグコミック」で、すでに10年の連載を続けていた。漫画家を目指していた学生時代の私にとっては、まちがいなく憧れの巨人たちの一人だった。
その後、妻と2人でデザイン事務所を始めたとき、私たちが「理想のフリーランス」と考えたのは「ゴルゴ13」だった。営業も宣伝もしないが、重要な仕事の依頼が来る。値引き交渉なし。高額の報酬を業務遂行のために惜しみなく使う。仕事は常に完璧で、その完璧さが次の仕事を呼ぶ。私たちは漫画の完成度の高さから「さいとう・たかを」という人も、そういう人なのだろうと想像した。その頃には、ほとんど神様だった。
番組でその神様にお会いして、漫画の黎明期からすでに明瞭なビジョンを持っていたことに、あらためて深い感銘を受けた。今では当たり前に存在する漫画というメディアだが、さいとう氏が漫画家になった時代はそうではなかった。彼は、漫画が映画と同じような大衆娯楽になる可能性を感じて、漫画家になったという。それゆえ、シナリオ、キャラ制作、背景、小道具、考証などの専門家集団による共同制作システムをはじめから目指した。「誰もいない広大な土地の前にいたんですわ」とさいとう氏は言う。これこそがビジョナリーの感覚である。だから仕事に「劇画」というネーミングを与え、出版社を作り、コンビニが登場するや否や「ゴルゴ13」を置いてもらう交渉を始めた。
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