@Yam_eye・2011年10月29日 作品から受けた印象を言葉で人に伝えるには二つの方法がある。一つはそれを見たときの自分や周りの人の様子を説明する。もう一つは、比喩的にそれと似た印象の文章を作ってしまう、つまりは詩だ。そして評論は、そのどちらも超えなければならない。
デザインを説明するとき、私はたくさんの言葉を使う。デザインが生まれた背景はもちろん、誰が、どこで使うのか、歴史的にはどういう意味を持つのか。あるいは、その便利さや使いやすさ、コストを下げるための工夫など、機能的な説明もする。プロジェクトの経緯や、開発メンバーたちの人となりなども、必要に応じて伝えてきた。デザインは統合的なプロセスなので、説明できることはいくらでもある。しかし、そうやって言語化していっても最後まで言葉にできずに残るのは、いつも「美しさ」だ。
美を言葉にするのはとても難しい。もちろん、美しさの印象を伝える形容詞はたくさんある。「シンプルな」「端正な」「あでやかな」「繊細な」「ハリのある」……。これらは、大まかな印象を伝えはするが、一言で終わってしまう。デザイナーがその形に込めたものを伝えるにはあまりにも大ざっぱだとも感じる。それを見たときの人の様子を表現するようなやり方もある。例えば「自然に笑みがもれるような」「思わず姿勢を正してしまうような」。少し細かいニュアンスを伝えるには悪くない方法だ。
そして「比喩」。比喩は、美術や音楽、料理などがもたらす印象を表すのに、非常に多く用いられる方法である。むしろ、感覚的なことを伝える評論の大半は比喩であると言ってもいい。ワインをテーマにした有名な漫画のように、その印象を壮大な物語として描きだすこともある。それが的確である場合は、大きな共感を得られる。
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