米フェイスブックがMeta(メタ)と社名変更して以来、欧米メディアに登場しない日はない「メタバース(仮想空間)」。そこにはどんな権利や法律の問題があるのか。福井健策弁護士に聞いた。

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Q1 フクえもーん、メタバースの法律問題を5分で教えてよー!

A1 とうとう何を言い出したんだ、この編集は。『スノウ・クラッシュ』 でも読んで、『Fortnite』 でも始めたら? だいたい、前回のNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)だけでも大変だったのに、メタバースは潜在的な広がりも課題の多さも、またケタが違うぞ……。

注1:スノウ・クラッシュ=「メタバース」の用語を初めて生み出したとされる、ニール・スティーブンスンの1992年の予言的SF小説
注2:Fortnite=米エピックゲームズが配信する、メタバースの代名詞ともいえるオンラインゲーム

Q2 そんなこと言わずに、得意の「さわり」だけでもお願いします!

A2 ……はあ。まず、メタバースとは仮想空間のこと。経済産業省が2021年7月にいち早く法的課題の整理を始めたけれど、そこではVR(仮想現実)の中でも、「多人数が参加可能で、参加者がアバターを操作して自由に行動でき、他の参加者と交流できるインターネット上に構築される仮想の三次元空間」と定義してるね。

▼関連リンク(クリックで別サイトへ) 経済産業省「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」

Q3 Fortniteなんかがそうなんですね。

A3 ああいうゲーム空間とか、老舗の『セカンドライフ』とか交流のためのVRChatとか、日本ではクラスター(東京・品川)の『バーチャル渋谷』なんかがそうだね。無数にあるとも言えるだろう。そこでは生身の我々がログインして、アバターという3次元キャラの外見をまとって、独立した仮想世界の中で生活したり交流したりする。例えば会話したり、取引したり、仮想的な家や商品を「所有」したりだね。

 Fortnite内では人気ラッパーが1000万人以上を集めてライブをしたし、バーチャルショッピングモールも増えている。バーチャルなパブで会話したり、例えば恋人をつくったりすることも可能だ。特にVRヘッドセット(VRHMD)ではMetaの「Oculus Quest2(現Meta Quest 2)」がかなり使い勝手が良く、これを付けて仮想のジムに行けばリアルな自分も動くから、文字通り汗を流すわけだ。一日中、このVRHMDを付けて「メタバースで生活する人」も出てきてるね。

Q4 おおー。すごそう。で、どんな問題があるんですか。

A4 あらゆる問題だ。つまり世界が再現されるわけだから、そこで起こるトラブルはたいてい起こる。取引すれば、ニセモノをつかまされることもあるし、約束した対価を払ってもらえないこともあるだろう。誰かがあなたの仮想のお店に居座って大声で業務妨害するとか、あるいはメタバース上でのストーカー行為もあり得るし、悪口やデマを言いふらされるかもしれない。

 あなたの姿を勝手にアバターにして、うろついてるやつがいたら? いや、あなたが映画『サマーウォーズ』みたいにアバターでヒーローとして有名になった後、そのアバターを勝手にまねする人が出てきたら? どっちが本物か分からない。

Q5 なるほど……でもそれって、ネット全体に言えるトラブルのような気もします。Twitterでもなりすましとかあるし。

A5 その通り。だから当面はネット・SNSでの対処法や慣習の応用編でしのぐだろうし、現にそうなっている。通常のSNSと一緒で、プラットフォームの規約や仕組みが安全装置になるわけだね。

 ただ、違いは、第1に、メタバース自体はまだ黎明(れいめい)期もいいところで、運営が常に洗練されてるとは言い難いことだ。運営元は、せいぜい社員数十人のベンチャー企業かもしれず、規約はどこかの使い回しで、サポートは英語の、ごく不十分な窓口がある程度かもしれない。第2に、今のところ多くのSNSより相当に匿名のユーザーが多いこと。そして最後の根本的な問題として、圧倒的な没入感。

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