2022年1月20日、最高裁判所は、不正指令電磁的記録保管罪の成立が争われたいわゆる「コインハイブ事件」について、東京高等裁判所の判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。今回はこの事件の概要と影響について弁護士の二木康晴氏に聞いた。

最高裁判所が上告審判決で逆転「無罪」を言い渡し、喜ぶコインハイブ事件の被告と関係者(写真/共同)
最高裁判所が上告審判決で逆転「無罪」を言い渡し、喜ぶコインハイブ事件の被告(右)と関係者(写真/共同通信)

Q1 どのような事件なのか。

A1 本件は、Webデザイナーである被告人が、自身の運営するWebサイトに「コインハイブ(Coinhive)」と呼ばれるプログラムを組み込んでいたことが、不正指令電磁的記録保管罪(刑法168条の2)に該当するかが争われた事件である。

 このプログラムが設置されたWebサイトを閲覧すると、閲覧者のパソコンが自動的にコインハイブの本体サーバーに接続され、マイニングのための演算を勝手に行うようになっていた。なお、Webサイトの閲覧を終了すると演算作業も終了する。

Q2 「マイニング」とは何か。

A2 暗号資産(仮想通貨)は、その取引の信頼性を確保するために、暗号資産の取引台帳に対して取引履歴の承認作業などの演算を行う必要がある。誰かがこの演算を成功させると、報酬として暗号資産が発行される仕組みになっており、この承認作業などの演算を行って暗号資産を得ることを「マイニング(採掘)」と呼んでいる。

 すなわち、Webサイトの運営者は、自身のWebサイトにコインハイブを組み込むことで、閲覧者のパソコンのCPU(中央演算処理装置)を利用してマイニングを行い、収益を得ることができるのである。

コインハイブの仕組み
コインハイブの仕組み

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