2021年11月1日から施行され、日本企業の間でも注目を集める中国の個人情報保護法──。前後編に分けて同法の概要とポイントを紹介する後編では、個人からの同意取得における注意点や越境移転に関わる規制などについて、中崎尚弁護士が解説する。
Q6 同意の前提として、本人にどのような情報を提供する必要がありますか。
A6 原則として、個人情報を取り扱う前に、本人に対して一定の情報提供を行う必要があります。具体的には、(1)個人情報処理者の身分と連絡方法、(2)取り扱い目的、取り扱い方法、取り扱う個人情報の種類、保存期限、(3)本人(個人情報提供者たる個人)の権利行使方法とプロセスを含める必要があります(17条1項)。この情報提供は、プライバシーポリシーを制定し公開する方法によることもできますが、アクセスが容易であることおよび本人が手元に保存しやすい状態にあることが必要です(17条2項)。この点についても、将来、情報提供の詳細な内容が下位規則や国家標準で定められる可能性があるため、注意が必要です。
Q7 本人の同意がなくとも、適法に個人情報を取り扱うことができますか。
A7 以下のいずれかの事由に該当する場合は、本人の同意を取得しなくとも、適法に個人情報を取り扱うことができます(13条)。
(1)当該本人たる個人が当事者となる契約の締結や履行に必要な場合、または法により制定された労働規則制度および法により締結された団体協約に基づき人的資源管理を実施するために必要である場合
(2)法的職責または法的義務の履行に必要な場合
(3)突発的な公共衛生事件に対応するため、または緊急状況において自然人の生命、健康および財産の安全を保護するために必要である場合
(4)公共利益のため、新聞報道、世論監督などの行為を実施し、合理的な範囲内で個人情報を取り扱う場合
(5)合理な範囲内で個人が自ら開示した、または既に合法的に開示されている個人情報を取り扱う場合
(6)その他法律、行政法規に定める場合
このうち、特に(1)の事由は従業員の個人情報取得の場面を想定していると思われます。
Q8 センシティブデータについて特別な規制はありますか。
A8 生体識別、宗教信仰、特定の身元、医療健康、金融口座、位置情報など、ひとたび漏洩また不正使用された場合、自然人の人格、尊厳が容易に侵害され、またはその人身、財産の安全が容易に危害を受ける個人情報の情報、および14歳未満の未成年者の個人情報は、機微な個人情報として、通常の個人情報と比較してより厳格な取り扱い要件が定められています(28条)。とりわけ、14歳未満の未成年者の個人情報は、どのような個人情報であっても、一律に機微な個人情報として取り扱われる点は要注意です。
機微な個人情報を取り扱うに当たっては、次の厳格な規制を順守する必要があります。
(1)通常の個人情報の場合に提供する情報に加えて、機微の個人情報を取り扱う必要性および本人に対する影響も通知する必要があります(30条)。また、本人から同意を取得する際は、個別の同意が必要です(29条)。
(2)事前に個人情報影響評価を行い、リスク評価報告書および取り扱い状況記録を3年間保存する必要があります(55条、56条)。
(3)14歳未満の未成年者の個人情報の取り扱いは、未成年者の両親またはその他の後見人の同意を取得しなければならず、14歳未満の未成年者を対象とする取り扱い規則を特別に制定する必要があります(31条)。
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