ついに再度の緊急事態宣言が発令。2020年の宣言以来、産業構造も人々の暮らしも大きな変化にさらされ、オンラインとリモートシフトはトレンドとして完全に定着した。そんな中、オンラインでのセミナーや会議、イベントを巡って常に頭を悩ませるのが著作権や肖像権などの「権利」だ。「オンラインセミナーで、この写真は使えるの?」「満を持した配信イベントだったのに、音楽の権利が引っかかって大ごとになった…」といった問題に直面する場面は、ますます増えている。そこで20年4月に掲載した福井健策弁護士の著作権Q&Aに、最近の動きを反映して本人が大幅アップデート。新たに注目の「肖像権」の項目も加えて緊急掲載する。

広がるオンラインセミナーや会議。著作権を巡る制度も利用者フレンドリーに変わってきているが、注意が必要だ(写真/Shutterstock)
広がるオンラインセミナーや会議。著作権を巡る制度も利用者フレンドリーに変わってきているが、注意が必要だ(写真/Shutterstock)

Q1 イベントやセミナーをオンライン配信したいんですけど、そこで既存の画像や資料を使いたいんです。できるでしょうか。

A1 では、かいつまんで著作権の基本をおさらいしよう。写真や文献資料は、多くの場合は著作物に当たる。特に映像資料なら、そこには映像そのものだけでなく、台本や音楽、さらに映り込む作品などの複数の著作物が含まれていることが多く、それぞれに著作権がある。オンライン配信は「不特定又は多数」の人々に届ける場合は「公衆送信」なので、権利者の許諾がないとできないのが原則だ。

 よく「非営利ならいいですよね」と聞かれるが、確かに非営利の一定の演奏や上映は、権利者の許可がなくてもできるという著作権法の例外がある(38条)。だが、残念ながら「非営利の公衆送信」という例外規定はないので、非営利団体であれ個人であれ、オンライン配信のためには使用する著作物について権利者の許可を得るのが原則となる。

 ただし、「引用」は許される(32条)。引用の法的基準は揺れているが、(1)未公表作品を避け、(2)人の作品だと分かるように明確に区別し、(3)あくまでも説明の補足程度に使う(付従性などという)、(4)改変しない、(5)出典の記載をしっかり行う、などの注意点に気を付ければ、おおむね許諾なく利用できるだろう。

Q2 なるほど。あと、フリー素材なら使っていいんですよね?

A2 もちろん、許諾を得れば問題なく使えるので、フリー素材やCC(クリエイティブコモンズ)といって、最初から権利者が利用自由という条件で公開している作品は利用可能だ。このときには、利用条件をよく確認するようにしてほしい。

Q3 流す映像に音楽が含まれていたり、配信するイベントでBGMを流したりしたい場合はどうなるでしょうか? 音楽は「JASRAC(日本音楽著作権協会)」っていう怖い団体があるから決して近寄るなって、会社の先輩に聞かされました。

A3 先輩、何をしたんだろうな? いやそんなことはない。まず、音楽の作詞・作曲は著作物なので、最初にお答えした配信の場合の原則が当てはまる。ただし、国内外のほとんどのプロの曲はJASRACやNexToneという専門の団体が管理していて、その場合はこうした団体で一括して利用の許可が取れる。オンラインでもある程度は手続きできるので、その意味ではむしろ個別に作詞家や作曲家に連絡して許可をもらうより、かなり楽だともいえる。

 ただ、例えば外国曲を映像に使う場合は「シンクロ」といって、JASRACなどの手続きだけではできず、個別に権利者と交渉する必要がある。手間もかかるし、場合によっては非常に高額の使用料になるので注意が必要だ。ほかにも国内外の曲をCMに使う場合など、個別の処理が必要で、気をつけないと落とし穴は意外と深い。場合によっては二度とはい上がってこられないほどの深さだ……。

Q4 やっぱり怖いじゃないですか! え、でもYouTubeみたいな投稿サイトには、外国曲を使った自撮りの映像なんてどんどん上がってますよね。あれは無断の「シンクロ」だから今にみんな逮捕されて、高い賠償金も払うことになるんですか?

A4 大丈夫だ。JASRACなどの管理する曲については、(1)リアルタイムのみの配信の場合や、(2)個人や(国内曲については)団体が商品などの宣伝を目的としない場合には、YouTubeやLINEなど多くの動画投稿サイト・SNS上での配信には許可が不要になっている。これは各投稿サイトが、JASRACなどと包括契約を交わしているためだ。

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